千体坊主「晴」 2/4

S「・・・そもそもがおかしいだろ。

その千人坊主ってのは」

 

「え?」

 

小さな交差点の赤信号で停まった際に、

Sは話し始めた。

 

どうやら僕の混乱を

見てとったらしい。

 

S「お前らは、おかしいとか

思わなかったのか?」

 

「いや、思ったけど・・・。

 

夜なべで千体も作らなきゃいけない

ってとことか・・・」

 

S「そうじゃなくてだな。

結果からみても明らかだが、

 

あれは天候を変える

まじないなんかじゃない・・・。

 

人が人を呪う類のものだ」

 

信号が赤から青に変わって

車は走り出し、

 

僕は腹から胸にかけて、

ぐう、と慣性の力を感じる。

 

S「まずやり方からして

おかしいだろう。

 

人形に自分の血か唾液を

染み込ませるなんて方法は、

 

どう考えても

占いや呪術の方面だ。

 

明日の天気を変えてほしいと

願う対象を、

 

自分の形代にしてどうする。

自分で自分に願うのか」

 

「・・・かたしろ、って?」

 

S「本物の模倣品ってことだ。

呪いのわら人形とかもそうだろ。

 

あれも相手の髪の毛や、

身体の一部を用いるそうだから」

 

僕は、自分の抱える

数百体の人形を見る。

 

この一体一体全てに、

 

Kの身体の一部だったものが

付着している。

 

確かにそうだ。

 

S「二つ目に、

千体目が出来た時に歌う歌だ。

 

・・・実はKの家に行く前に、

ちょっとネットで調べてみた。

 

お前が電話で言ってた、

千人坊主とやらをな。

 

検索掛けたらすぐ出てきた。

 

あるオカルト系の掲示板に、

一からやり方全部載ってた。

 

全く賑わってはなかったがな。

 

最後に歌う歌は、

 

晴れを願う場合は、

有名な童謡の『てるてる坊主』だ。

 

聞いたことぐらいあるだろ」

 

そう言って、

Sはその歌の歌詞を口ずさんだ。

 

てるてる坊主 てる坊主

あした天気に しておくれ

いつかの夢の 空のよに

晴れたら 金の鈴あげよ

てるてる坊主 てる坊主

あした天気に しておくれ

私の願いを 聞いたなら

あまいお酒を たんと飲ましょ

てるてる坊主 てる坊主

あした天気に しておくれ

それでも曇って 泣いてたら

そなたの首を チョン切るぞ

 

S「・・・これが、晴れを願う場合の

歌なんだそうだ。

 

一方で、雨を願う場合は

少し違った歌詞になる」

 

そうしてSは、また口ずさむ。

 

ずうぼるてるて ずうぼるて

あした雨よ ふっとくれ

いつかの朝の 地のように

降らせば 赤い飴あげよ

ずうぼるてるて ずうぼるて

あした雨よ ふっとくれ

私の願いを 知ったなら

からいお酒を たんと飲ましょ

ずうぼるてるて ずうぼるて

あした雨よ ふっとくれ

それでも笑って 晴れたなら

そなたの足を チョイもぐぞ

 

S「これが、雨を願う場合の歌詞。

どちらも、大した変りは無い。

 

三番目の最後の部分が、

 

どちらも願いが叶えられなかったら

危害を与える、

 

という内容だ。

 

実際にある童謡でも、

ちょん切るとか言ってるしな」

 

「それが、耳の中に降る雨と、

どう関わるん?」

 

S「『そうされないために人形達は

一生懸命天気を変えようとするのです』」

 

「え?」

 

S「ネットの掲示板にあった言葉だ。

やり方を説明した部分のな。

 

・・・もしも人形に

唾や血を付ける行為が、

 

人形を限りなく『生きたモノ』 に

近づけるためだとする。

 

そうして吊るされた千体の人形に、

 

もしもほんの少しの意思を持ったとして、

その意思は何のために使われる?」

 

「何のため・・・」

 

S「天候を変えるためだ。しかし、

現実はそんなに貧相なものじゃない。

 

天気は気象にのっとって動く。

変わらない。

 

だとしたら、首を切られないために、

足をもがれないために、

 

千体の人形に変えることが出来るのは、

どこだ?」

 

Sは、ゆっくりと続けた。

 

S「それは頭だ。

 

人間の脳味噌の中の、

僅かな部分」

 

僕は黙ってSの話を聞いている。

 

腕の中の人形達が、

何だかざわついている気がする。

 

S「勘違いすんなよ。

 

俺は別に、人形に命や意思が

宿るなんて思っちゃいない」

 

そこでSは少しだけ笑った。

 

何が可笑しかったのかは

僕にはわからない。

 

S「・・・つまりは、『そういう筋道』が、

意識下か無意識かは人次第だろうが、

 

この千人坊主を行うプロセスの中で、

『出来上がって』しまう。

 

・・・千個も作った後なら、

 

時間もかかって

集中力も使ってるだろうしな、

 

暗示にかかりやすい

状態ってわけだ。

 

『部屋から出てはいけない』っていう

注意文句もここにかかってくる。

 

時間を置いて作らせない、

一気に集中的にやらせる」

 

(続く)千体坊主「晴」 3/4へ

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