千体坊主「晴」 3/4

Sの言葉によって、

 

頭の中に一つの話の道筋が

浮かんでくる。

 

けれども、それは決して

気持ちのいいものじゃない。

 

S「あそこにアレを書きこんだ奴の

気が知れないな。

 

愉快犯って奴か。

 

そう言う意味じゃあ、

 

解決策と思しきものを暗に示してる、

って点でもタチが悪い。

 

雨が降り続ければ、

人は晴れ間を望む。

 

ああいう形でセットで出されれば、

誰だってもう一方が解決策だと思う」

 

どくん、と心臓がはずむ。

 

Sの言わんとしていることが

理解出来たからだ。

 

雨を願って、Kの頭の中に

雨が降る様になった。

 

だとしたら、

晴れを願えば・・・。

 

S「これは憶測だが・・・

 

目に関することじゃないかと、

俺は思う」

 

光。

 

光のイメージ。

 

目の前で輝く何か、

 

時を追うごとにそれはどんどん

激しく眩しくなっていって、

 

ついには・・・。

 

S「俺は、幽霊とか超能力とか、

基本的に信じていないが、

 

『呪い』は、あると思ってる。

 

いや、あってもいい、

と思ってる」

 

車は目的地である汗見川の

川沿いに建つ、

 

一軒の個人経営らしい店の

前で停まった。

 

看板には『酒・タバコ』とあるが、

もうシャッターは閉まっている。

 

S「あるプロセスを通して、

生きた人間から生きた人間へ。

 

その間に

意思と脳みそがある以上、

 

ある程度の何かが起こっても

不思議じゃない」

 

そう言って、

Sは一人車から降りていった。

 

そしてシャッターの横の

勝手口の前に立ち、

 

ノックした。

 

しばらく間があってから

僅かに扉が開く。

 

そこでSが二言三言何かを言うと、

 

ドアの隙間が大きくなって、

Sは店の中に入って行った。

 

次にSが出て来た時、

その手には一升瓶が抱えられていた。

 

S「これ持ってろ。じゃ、行くぞ」

 

「・・・S。ここの人と、

知り合いなん?」

 

S「そんなとこだ。

一番からいのを選んでもらった」

 

そして車は近くの河原へと

降りる道を進んで行く。

 

タイヤが河原の石を踏む音がした時、

Sは車を停めた。

 

河原自体はそれほど広くない。

 

停めた車のすぐ近くに、

川の流れがあった。

 

S「さてと。ここらで良いだろ」

 

とSが言う。

 

ただ、僕には

何が良いのかは分からない。

 

Sが車のライトをつけたまま

車を降りる。

 

そして後部座席の戸を開いて、

人形入りのゴミ袋を取り出す。

 

S「これからやることだけどな。

作業には変わりないぜ。

 

ま、人形作って吊るすよりは

楽だろうがな」

 

そう言って、

SはさっきKの部屋で

 

ノートに書くために使ったペンを

僕に渡した。

 

持って来ていたらしい。

 

S「ざっと説明するぞ。

人形に顔を書く。

 

記号的な顔でいい、

凝る必要は無いからな。

 

そんで、一袋分たまったら、

酒をかけて、川に流す。

 

分かったか?」

 

分かったけど、

分かんなかった。

 

実際に何をするかは

分かったけど、

 

何でそんなことをするのかは、

全く分からなかった。

 

僕は曖昧に頷く。

 

S「・・・まあいい。

ただ、顔を書けばいいんだ。

 

時間もアレだしな、

さっさと済ますぞ」

 

夜の河原で、

 

ティッシュペーパー人形に

顔を描いてゆく。

 

ちょんちょんちょん、すうー。

で、目と鼻と口の出来上がり。

 

簡単だ。

 

一体、十秒もかからない。

 

それでも千二百体は少なくともあるので、

僕らはただ黙々と作業を続けた。

 

一つのゴミ袋に一杯になったら、

その中に直接酒を入れる。

 

そして川に膝まで入って、

 

中身を水の流れに沿って

一気にぶちまける。

 

夜の川にさらさらと

流れてゆく人形達は、

 

どこか幻想的で、

 

でもこれは

ゴミの不法投棄なわけで。

 

S「・・・役目の終わった

てるてる坊主は、

 

こうして川に流すもの

なんだそうだ」

 

とSが作業中、

何処かの折にぽろりとこぼした。

 

そうなのか、と思った。

 

確かに首や足を取られるよりかは、

こっちの方が随分マシな様な気がする。

 

全ての作業が終わった時、

もう東の空から太陽が上り始めていた。

 

最後の一体を見送って、

僕とSは同時に伸びをした。

 

「Kの奴は大丈夫かねぇ・・・」

 

S「まあ、大丈夫だろ。

呪いには呪いを、ってやつだ」

 

「何それ」

 

S「知らん。適当に言ってみただけだ。

いずれにせよ戻れば分かる、出すぞ」

 

Sが車に乗り込む、

僕も慌てて助手席のドアを開けた。

 

(続く)千体坊主「晴」 4/4へ

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