模倣 2/3
さらにBを引き起こして
2発目を入れようとするHを、
やっと動いた俺が引き止めて、
手を放させた。
Bは、よろけながら立ち上がり、
止める間もなく、
B「キャ―――――!
助けて――――――――!」
みたいに叫びながら、
林の中に走り込んで逃げ出した。
慌てて追おうとした
俺の肩を掴んだHを見て、
表情に正直びびった。
これマジでHか?と思った俺の耳に、
Aの声が刺さった。
A『J君?Hさん?
大丈夫――――――?』
H「あ―――――――大丈夫!
今、撃退したから!」
Hが張り詰めたような大声で返す。
H「・・・ほい、J」
やっと少し表情の和らいだHは、
携帯を俺の耳に突き付けた。
A『J君?もう居ない?
Bのニセモノ』
俺「・・・え?」
思わず聞き返した俺に、
Aはざらっと説明してくれた。
さっきまで俺と居て、
Hを待ちながら俺と大学時代の
話とかしてて、
Hに殴られて走って逃げたBは、
Bじゃない、と。
完全に思考の停止した俺を
Hが引っ張って、
林から普通の道路に出て
しばらく歩いて、
コンビニを見つけて近づいた。
もう薄暗くなった駐車場にBが居て、
携帯をいじってました。
B「あ、J君!Hさん!」
元気よく声を上げたBの顔には、
殴られた痕など全くなく。
B「待ち合せ場所に戻ろうとして
道に迷って、コンビニ戻っちゃってー。
メール出しても返事ないから、
電波悪いのかなって焦ってたんですよ」
H「・・・うん、電波悪かったしJ来たし、
動いちゃった。メールは来てないなあ」
辛うじて笑ってみせたHと、
まだ思考停止してた俺の携帯が、
一緒に鳴った。
『Bです。すみません!
コンビニには着いたけど、
そこ戻る道が解らなくなっちゃいました。
コンビニで待ってるので、
J君着いたらコンビニ来て
くれませんか?』
着信したメールを読んで、
やっと頭が動き始め、
混乱の渦に巻き込まれた俺をよそに、
HとBは、また飲みの店を相談してた。
決めるとさっさと電話して、
予約した二人に引きずられ、
とりあえず飲んで喋り、
一段落したら早めに店を出て、
H「主婦だしお子さん居るから、
そろそろお開きで」
とHがBを言いくるめて解散し、
俺は半ば混乱したまま帰宅しました。
数日後。
Hと連絡を取り、
A交えて3人で会った。
やっと、俺は事情説明を受けることが
出来ました。
『分身というか、
自分の姿を見る人が出る場所。
祟り等がないか調べてくれ』
との依頼を受け、
見た人と直接会ったHが、
敵の気配や強さが何故か
読めないことに心配になり、
保険にBを呼ぶことを考え、
口実に、俺との飲みをセッティングしたのは、
前述の通りです。
とりあえず気配を探りに
一人で現地入りしたHは、
相手の気配が予想以上にしょぼくて
貧相なことに、拍子抜けしたそうです。
確かに霊的なものが居る。
だけど年代物のわりに本当にしょぼい。
相談者に会っても読めなかったのは、
しょぼすぎて気配が弱かったからだ、
と納得したほどで。
分身とかを『みせる』以上のことが
出来そうには全く思えないから、
気にする必要なし。
それが当初のHの結論でした。
H「いやね、本っ当に貧相だったのよ。
来て損したと思うくらい」と。
で、Bが待ち合わせ場所の石碑に来て、
二人で俺を待ったが、
最悪の事態を想定して、
(ヤバいモノが居たら、
上手いことBのアレを使って、
B当人には気づかせずに片付けよう、
と算段してたらしい。
Hのこういうとこが、
Aの神経に障るようですが・・・)
待ち合せ時間をずらしてあったので、
暇過ぎて間が持たない。
Bがガムを欲しいと言ったので、
コンビニへの道を教えて行かせた。
一人残って、漂えども姿はない、
貧相な気配をお遊び程度に探ってるうち、
俺到着。続いてB帰還。
H「その時はね、本当に変だとは
思わなかったんだよ。アレも居たし」
HもAも、みえるひとは皆、
人をみるときには外見だけじゃなく、
自然に気配や憑いてるモノも、
みるのだそうです。
Bは全く普通に間違いなく
Bの気配を持っていて、『アレ』も居た。
何も疑う要素はなかった。
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