模倣 1/3

コンパクトの件で懲りたのかと思ったら、

懲りてないH。

 

相変わらず『みえる』のを利用して

ちょいちょい稼いでるようで、

その奴の『小遣い稼ぎ』に関わる話。

 

「いつもHは余計なことする」と、

奴の絡む話には常に不愉快のAが、

 

文句より興味で根掘り葉掘り聞いてた、

怖いよりは珍しい(らしい)事例です。

 

(でも他に『みえるひと』の知人が

居ないため縁切り困難)

 

コンパクトの件から何ヶ月かした頃。

 

Hから連絡が来て飲みに行くことになったが、

呼び出された先が、変な場所だった。

 

そこまで少し距離のある市で、

街外れに森っぽい林があって、

その中。

 

おいおい、と思いつつ指示された通り、

砂利を敷いた道に入ったら、何か寂れた

石碑みたいなもんが奥にあった。

 

石碑の横で待ってたHに、

「おいこら」と言うと奴は、

 

H「大丈夫、大丈夫。

居るけど、しょぼい奴だから♪」

 

とかほざいて、

カッカッカと笑った。

 

「そーか。んじゃ、

とっとと出て飲みに行こうぜ」

 

と俺が言ったとこで、

Hの携帯が鳴って奴が出た。

 

H「はーい♪ J(俺。Jとします)来たよ。

あ、ここ」

 

Hが携帯を切り、砂利道を歩いて来た

Bに手を上げた。

 

B「やっほー♪ Jくーん」

 

手を上げ返しながら歩いて来るBの姿。 

手にはコンビニ袋。

 

H「お疲れー。Bさん、

コンビニ行く時、迷わなかった?」

 

B「少しだけ。横道間違えちゃった

みたいでした、ここ戻る時も」

 

と答えたBが、コンビニ袋の中から

雑誌とかお茶ペットとかガムとか、

何か細々したものを、

下げてたバッグに詰め替え始める。

 

その隙に俺がHを見ると、

小声でコソコソ説明してくれた。

 

H「頼まれごとで、話の段階じゃ、

よくみえなくてさあ。

最悪のケース想定してBさん呼んどいた。

勇み足だったけどねー」

 

そういや、会う日時と場所を指定したのは、

Hだった。

 

何も知らない既婚女性のBを、

一対一で呼び出せる仲じゃないから、

俺を口実に使いやがったらしい。

 

(Cは嫌がったんだろう。

怨霊塊憑男Iの件以来、Bの話は、

したくないっぽい様子だから)

 

呆れた俺に構わず、Hは続けました。

 

H「JとBさん、仲悪くはないんだよね?

今日は一緒に飲みでオッケー?

一軒目でBさん帰して次行ってもいーよ。

一軒目、俺おごるよ」

 

「いや、B一緒で全然構わないし。

3人でいんじゃね?」

 

そのまま飲む店の相談してたら、

またHの携帯が鳴った。

 

携帯を見たHは、

俺とBに向かって言った。

 

H「悪い。ちょい待ってて。

少しかかるかもしんないけど」

 

B「J君いるし、大丈夫~。

お喋りしてます~」

 

と能天気に答え、

Hは俺だけにこそっと、

 

H「この辺、Bさん居たら、

寄っても来れない連中ばっかだからさあ。

全く心配しなくていーよ♪」

 

と言い、夕日の射し始めた、

木立の間に消えてった。

 

それでBとダラダラ学生時代のこととか

喋ってたら、ものの数分で、 

「おい、J!!」ってHの声がした。

 

何か妙に焦った声だった。

 

「・・・?おう。何だ、早いじゃん」

 

H「あー。ちょい、こっち来て!」

 

しばらくして、道じゃなく

横の林の中から現れたHは、

 

頭に蜘蛛の巣を引っ掛けて、

肩に葉っぱ付けて、変に青ざめていた。

 

「・・・?H、何かあったのか」

 

俺が尋ね、Bも「Hさん~?」と、

不思議そうに聞いたが、

 

Hは答えもせずに、

凄まじい勢いで近づいて来た。

 

そして俺の腕をがっしり掴んで、

結構な力で引っ張りつつ「来いよ」と言った。

 

何か変だ、と思って、

俺は何となく腕を引く力に抵抗して

引っ張り合うようになったところへ、

 

Bが割って入るように近寄って、

「Hさん、何したんですか?」

と言った。

 

そしたら、ぶったまげたことに、

凄い勢いで向き直ったHが、

 

パッと俺を放したかと思うと、

Bの胸倉を掴んで、ぶん殴った。

 

バキッ!と、グーで女の顔面を。

悲鳴を上げて倒れるB。

 

俺は仰天して、動くことも出来ずに、

ただHの形相を見ていた。

 

(続く)模倣 2/3へ

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