山の女神の夫探し
私は子供の頃、ユースホステルのキャンプに放り込まれたことがある。
※ユースホステル
青少年少女の旅に安全かつ安価な宿泊場所を提供しようという主旨で始まった運動と、それにより生まれた宿泊施設。(Wikipediaより)
キャンプ最終日の夜に肝試しがあり、その前に一般宿泊客も参加した怪談の会があった。
これは、そこで一般客の大学生のお兄さんが披露した話。
ものすごい美人の女神
彼の田舎は、海が無い県の山間部にある。
近くには手軽に登れる山があり、他県から登山に来る人も多い。
そして、その山には大昔から「女神が住んでいる」という。
一つの山とその周囲のいくつかの山が、女神が守る山だと。
女神の夫は人間で、30年~50年位で代替わりしていく。
女神は人間に姿を見せないのが決まりであり、移動する時は獣の皮を被って姿を隠すそうだ。
夫選びの時も、獣の姿になって付かず離れず、その人の後を付いて回って人柄を見極める。
そして、折を見て獣の皮を脱いで姿を見せる。
夫に選ばれた男は一度は里に帰るものの、結局は何もかも放り出して女神の夫になる。
里に帰ってきてから山中であった美女の話をして、仕事も親も捨てて山に戻ってしまう。
30年~50年位の割合でそういった特徴的な失踪者が出るので、地元では「夫が変わった」と分かる。
夫に選ばれた人が残した話では、女神はものすごい美人だそうだ。
(終)