夜ふと目が覚めたら一人きりだった
これは、僕が幼稚園ぐらいの頃にあった話。
当時の僕はいつも両親の間で寝ていたのだが、ある夜に目が覚めた時、なぜか“自分一人きり”だった。
夜中に一人きりになったことなんてそれまでなかったので、僕は怖くてたまらなくわんわん泣いた。
そして友達のタケちゃんの家に助けてもらおうと真っ暗な外に飛び出したら、月明かりの夜空に月の何十倍もある『真っ黒な穴』が開いていた。
巨大な黒い穴に怯えながらタケちゃんの家までたどり着き、扉を叩いたが誰も出てこなかった。
その後、泣きじゃくりながら助けを求めて歩き回った気がするが、よく覚えていない。
ここまでが自分の記憶。
そして、ここからは父から聞いた話。
同じ日の夜、父がふと目覚めると、母との間に寝ているはずの僕がいなかった。
トイレを見てもいなかったので、母を起こして家の中を見回し、それでも見当たらないので相当に焦ったという。
外にでも出たか?と駆け出そうとしたところに、元いた寝室から僕がスタスタと出てきて、自分の顔を筋張った両手でわしづかみにしながらヒクヒクしていた。
父は戸惑いながらも僕が泣いているのか?と様子を見ると、僕は目だけをギョロギョロと左上を見上げながら笑っていた。
父からは今でも時々、「あの時は気味悪かったよ。お前、あの時どこに隠れてたんだ?」と聞かれるが、僕に聞かれてもわからない。
※パラレルワールド|参考
ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われている。(Wikipediaより)
(終)