向こう岸から睨むズブ濡れの女の子
これは、私が小学4年生の頃の話です。
その日、近所の女の子5人で近くの山へ行きました。
私の家は山に囲まれた盆地で、小学校の裏にも少し行けば山があったので、よく子供だけで行っていたのです。
その山には川が流れていて、深さは子供の腰くらいだったでしょうか。
岩も大きなものが沢山あって、ちょうどいい泳ぎ場もありました。
「あんな子、いたかな?」
川で遊んでいると、ユカリ(仮名)が「足のマメを魚がつつく~」と言い出しました。
私たち他の4人は「ウソだ~」と言って疑っていましたが、ユカリがあまりにもしつこく言うので、みんなで潜って水の中の彼女の足を見てみました。
すると、確かに小さなメダカみたいな魚が、ユカリの足の親指にあるマメをつついていました。
私は顔を上げて、みんなに話しかけようとしました。
しかし、そこには誰もいなかったのです。
さっきまでユカリの足を4人で潜って見ていたはずなのに・・・。
「え!?」と思って川から上がると、3メートルほど向こう側の岸には、白いワンピースを着た女の子が凄い顔で睨んでいました。
「あんな子、いたかな?」と思いながらよく見てみると、その子はズブ濡れだったのです。
そして「迷子かな?」と思った瞬間、後ろから髪を引っぱられました。
しかし、後ろを振り向いても誰もおらず、向こう岸の女の子もいなくなっていました。
その後、一人で自転車に乗って帰ったのですが、一緒に行った友達4人は、私が急にいなくなったから心配で家に戻っていたそうです。
成長した今、あの頃の思い出として「メダカは人間の肉を喰うのか?」という考えが強かったのですが、やっぱりズブ濡れの女の子の方が怖いですよね・・・。
でも当時は怖いというより、「あの子は迷子かな?」と心配な気持ちだったかと思います。
(終)