俺に憑いていたモノたち

俺の家、裏に日本海があって

浜がすぐ近くにあるんだけど、

 

今まで霊みたいのは

見た事なかった。

 

その浜ってのが遊泳禁止で、

釣りにはもってこいなんだけど。

 

(水に入ると底が一気に深くなっている)

 

さらに、その浜は

めちゃめちゃ広い。

 

丘がいくつも出来てたり、

 

浜から水辺に行くまで、

歩いて20分はかかる。

 

夜なんか地元の人間でも、

 

浜の真ん中まで灯り無しで行ったら

ワケわかんなくなるくらいで。

 

だから俺も犬の散歩で浜に行くけど、

水辺まで行く事は無い。

 

しかしその日の夜、

俺は犬を連れて水辺にいた。

 

なぜかと言うと、

 

ウチの犬が初めて

子供を生んだから。

 

出産する所を初めて見たけど

計5匹、

 

1匹は出産直後に死んでしまったが

凄く感動した。

 

いつもはロープを付けて

散歩してるんだけど、

 

(付けないと浜の奥に走ってっちゃうから)

 

お疲れ様って事で、

 

好きな所まで行かせてやろう

と思ってロープを外した。

 

すると、みるみるうちに闇の中へ

走って行ってしまった。

 

まあそれは想像してたから、

懐中電灯を持って小走りで追っ掛けた。

 

ただいくら追い掛けても

砂に足は取られるし、

 

丘の起伏が激しくて、

途中からタバコ吸いながら歩いて行った。

 

歩き着いたのは水辺。

ウチの犬の姿は見えない。

 

とりあえず口笛を吹いて

呼び続けてたら、

 

5分くらいで走り寄って来たんで、

ひと安心。

 

頭を撫でながら「もうちょっと

遊ばせてやるか~」と思ってたら、

 

犬が水の中に入って行った。

 

マジでビックリした。

 

何故かというと、

ウチの犬は水が大っ嫌い。

 

大好きな庭にいても、

 

洗車の水の音が聞こえるだけで

家の中へそそくさと入ってしまうくらいに。

 

しかもそこそこ波があり、

 

海に入った事の無いウチの犬が、

水の中に飛び込んでしまったわけだ。

 

もう大慌てで懐中電灯を照らし、

犬の名前を呼んで「戻って来い!」

 

と叫んだが、

みるみる海の奥へ行ってしまった。

 

姿は確認出来ない。

 

俺も海の中へ入ってみたが、

1メートルも進まないうちに、

 

腰のあたりまでズルズルと

水の中に吸い込まれてしまう。

 

それ程、急に深くなっているから

ウチの犬なんか絶対溺れている!

 

パニックになった俺は、

とにかく家へ走った。

 

靴が邪魔だから途中で脱ぎ捨てて

裸足で走った。

 

多分、10分程で家に着いたと思う。

 

家に着き、

玄関を開けた俺は、

 

「うわっ!!」

 

と言ってしまった。

 

ウチの犬が何も無かったように、

尻尾を振って俺の帰りを迎えていたから。

 

もう俺の頭の中は「???」だ。

 

とにかく母親に話を聞くと、

 

俺が犬を連れて出て行ったと思ったら、

ウチの犬の鳴き声が聞こえたらしい。

 

居間を見るとやっぱりいる。

 

つまり、犬はずっと家に居た、

と言うのだ!

 

だとしたら俺が玄関で

ロープを付けて浜まで行き、

 

ロープを外してやった犬は

何なんだ?

 

水辺で頭を撫でていた、

あの犬は一体???

 

飼い主の立場で言えば、

あれは絶対ウチの犬だった。

 

考えれるのは、

 

生まれた直後に死んでしまった

1匹の子だろうか?

 

昨日、月に一回、

 

ウチにお経をあげに来てくれる

お坊さんが俺を見て、

 

「厄介な者をしょいこんだね」

 

と言った。

 

「え?」

 

と思って聞いてみると、

 

俺には犬と男が4人、

女が1人の塊が憑いていると言う。

 

お坊さんの話によると、

内容はこう。

 

まず、生まれた直後に

死んでしまった子は、

 

俺を親だと思っているらしい。

 

なぜ自分を一人にするのか?

 

自分の相手もしてという思いで、

俺が散歩したのは何と、

 

あの死んだ子だと言うのだ。

 

そしてそのまま浜へ行った

あの子の霊に、

 

浜でさまよっていた浮遊霊、

自殺霊がくっ付き、

 

邪悪な塊になっていると・・・。

 

「子犬の親を想う寂しさが残っているから、

簡単には離れないよ。

 

とりあえずお祓いをして行くけど、

早めにお寺に来なさい」

 

と言われた。

 

そして、

 

「その霊の塊が望んでいるのは

君をあの世に連れて行く事だから。

 

いいね?

早めにおいで」

 

と。

 

もちろん今日は仕事があったから

お寺には行けていない。

 

(終)

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