道路の真ん中でギクシャクと歩く男
これは、トラックの運転手をしている
友人から聞いた話です。
その時、友人Aは
鳴子という場所を走ってた。
その頃の仕事は
とてもハードで、
1、
会社から荷物を積んで現場へ到着
2、
会社に電話
3、
そこの現場近くで違う荷物を積み、
次の現場へ
4、
次の現場へ到着後、
2に戻る
のような具合で、
一度仕事に出ると、
1週間は家に帰れませんでした。
時間は夜中の3時頃、
右側は林、
左側は落ちたらお終いの崖、
すれ違う車さえありません。
すると、前方に
車のテールランプが見えたので、
少しスピードを上げて
その明かりに近付いて行く。
その明かりの正体は、
自分と同じ荷物運びのトラックでした。
『こんな夜中に御苦労さんだねえ、
お互いに』
などと思いつつ、
そのトラックの後ろを。
走っていると、
急にそのトラックが
反対車線にはみ出して、
直ぐに元の車線に戻ったので・・・。
『なんか障害物でもあったんかな?』
と少しスピードを落とし、
前のトラックが何かを避けた場所に
近付いて行った。
どうやら人が歩いてるらしい。
しかも、その車道の真ん中を。
『うわ、邪魔だなあ』
といっても、
轢いてしまったら大変なので、
さらにスピードを下げて
その人に近付く。
トラックのライトに照らされた
その人は、
モジモジくんのような
全身タイツを着ている。
しかも、
『多分、全身の関節が
逆に曲がってた』
そうだ。
初めは後ろ向きに歩いている
と思った程に・・・。
それがギクシャクと、
こちらに向って歩いて来る。
顔を見ると、
何やら早口で喋っていた。
ビビったAは、
スピードを上げてソレを避ける。
その後、
サイドミラーで見てみると、
ソレは相変わらず
ギクシャクと歩いていた。
すると、
少し行った場所に、
先を走っていたトラックが
停まっている。
興奮していたAは、
その後ろにトラックを停めて
降りてみると、
先を走っていたトラックの
運転手Bも降りて来た。
A「さっきの人って・・・」
B「お前も見たのか」
A「はい・・・」
B「何なんだろうなアレ・・・。
まさか、お化けっちゅう事は
ないよなあ」
A「ちょっとシャレに
ならないですよね・・・」
しばらく興奮気味に
そんな事を喋っていると、
BがAの後側を見て、
B「おい、戻って来たぞ・・・」
Aが後ろを振り返ると、
さっきの人がギクシャクと、
こちらに向って歩いて来る。
2人とも急いでトラックに乗り、
逃げたそうです。
A「もしかしたら事故にでも
あったんかなあ?
でも全身タイツの意味が分からん」
と、友人は言っていました。
(終)