その海から仕入れた食材には

タコ

 

地名まではあまり詳しく書けないが、

北陸の方とだけ。

 

私は料亭の調理関係に勤めている。

 

海と山が近くにあり、

 

両極端な食材がわりと簡単に

手に入るということで、

 

作る側にとっても、

食べる側にとっても、

 

とても恵まれた環境と言えるだろう。

 

けれどたまに、

妙な材料が混じることがある。

 

二年ほど前になる。

 

その日は、

 

予約で入られた団体のお客様に

タコ飯を振舞うこととなり、

 

港から直送されたタコを大きな鍋で茹で、

手の空いた者で掃除し、

 

だしで煮込んでから、

刻む作業に入っていた。

 

作業が始まってからしばらくして、

厨房に「うわぁ!」という声が響いた。

 

一人の板前が身を引き、

包丁を床に落としていた。

 

なんだなんだ、と皆が集まる。

 

そして皆が息を呑んだ。

 

髪の毛。

 

切り込みを入れたタコの足の中に、

何本もの人の髪の毛が筋を通すように。

 

単純な不気味さに、

背筋に寒気がした。

 

一匹だけではなかった。

 

十匹近いタコの肉の中に、

 

どうやって入り込んだのか分からないほど、

人の髪の毛が潜り込んでいた。

 

包丁を入れるたびにそれが引っかかり、

刃に絡むのだ。

 

結局、団体のお客様には

お品書きを変更し、

 

少し季節をはずした竹の子ご飯が

振舞われることとなった。

 

タコは全て捨てた。

 

買い付けを行った業者に苦情を入れると

返金には応じてくれたが、

 

他に似たようなことがあったのか、

と聞くと、

 

曖昧に言葉を濁していた。

 

あれが何だったのか、

それきり分からないままとなっている。

 

ただ、それから一度だけ、

 

同じ海から獲った鯛の身の中から、

びっしりと人の髪の毛が出てきたことがある。

 

自殺の名所とは聞かない。

 

変な伝承があるわけでもない。

 

それでもその海から仕入れた食材には、

たまに変な物が混ざっているのだ。

 

とりあえず私はあれ以来、

タコを食べてはいない。

 

(終)

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