言伝 1/4

大学時代の

冬のある日のことだった。

 

その日の講義が終わってから、

 

僕は友人のSとKと三人で

心霊スポット巡りに繰り出していた。

 

言いだしっぺはK、

車を出すのはS、

 

僕はおまけ。

 

いつものメンバー、

いつものシチュエーションだった。

 

目的地は、僕らの住む町から

幾分遠い場所にある、

 

今は入居者のいない

古い集合住宅。

 

噂だと、そこには複数の首のない

幽霊が出るらしいのだけれど。

 

結論から言うと、

今回はハズレだった。

 

辺りが暗くなってからようやく

 

目的の廃マンションに辿り着いた

僕らを迎えてくれたのは、

 

色とりどりの落書きと、

 

階段の踊り場で季節外れの花火をする

マナーの悪い先客だった。

 

久々の大ハズレだ。

 

K「ああいう奴らってのは決まって、

怖い思いしたり祟りに遭ってから、

 

『後悔してる。あんなとこ

行くんじゃなかった』

 

とか言うんだ。

 

くっそ、馬鹿じゃねーのか。

 

呪われねーかな、

あいつら。

 

それか花火で火傷しろ、

ヤケド」

 

帰りの車の中、

 

いつもなら車酔いでダウン

しているはずのKが、

 

後部座席でぶつぶつ

愚痴をこぼしている。

 

花火をしていた若者たちとは

接触自体はなかったのだけれど、

 

Kは彼らの行為に

相当おかんむりのようだ。

 

K「覚悟がねー奴は

後で後悔すんだよ。

 

『やっぱり止めとけば良かった』

 

とか、俺だったら

死んでも言わねーし。

 

逆に、『やっぱそうだよな』

って言うな、うん」

 

S「知らねーよ・・・」

 

運転しているSが若干

うんざりした様に呟いた。

 

Kは廃マンションを離れてから

ずっとこんな感じだ。

 

車は郊外、左右を田畑に挟まれた

道を走っていた。

 

暖房が暑くてウインドウを

少しだけ下げる。

 

僅かに開いた隙間から入り込んでくる

冷たい空気が気持ちいい。

 

けれど、やりすぎると

車内が冷える。

 

僕はすぐにウインドウを閉めた。

 

確かにKの言うことも

分からなくもない。

 

僕だって心霊スポットと呼ばれる

場所に行くときには、

 

『何が起こっても不思議じゃない』

 

という意識をもって行く。

 

実際、過去に

たくさん怖い目にも遭ったし、

 

死ぬかもしれない

と思ったことだって、

 

一度や二度ある。

 

それでも、

今日だってKが

 

「首なしマンション行こうぜ」

 

と言うと、

ほいほい誘いに乗るのだから、

 

『何されたって文句は言わない』

 

くらいの覚悟は、僕自身

持っているつもりなのだろう。

 

K「なーなー、

俺腹減ったんだけどよ。

 

なんか帰りにラーメンでも

食べて帰ろうぜー。

 

俺、今日は金ねえけど」

 

Sが「餓死しろ」と、

冷たく言い放つ。

 

僕もKに何か言おうと

後ろを振り向いた、

 

その時だった。

 

僕らを乗せた車が

急ブレーキをかけて止まった。

 

道がちょうど見晴らしが悪く

細い山道へと入るところだったので、

 

死角からトラックでも

出て来たのかと思った。

 

けれども、

そういうわけでは無い様だ。

 

S「・・・事故だ」

 

僕とKに向かって

Sが短く言った。

 

事故だと。

 

それから車を、

 

道の脇のスペースになっている

部分に寄せる。

 

車のライトの先、

白いガードレールのそばに、

 

確かに倒れたバイクと共に、

人影らしきものが倒れていた。

 

ライトはつけたまま、

 

シートベルトを外して

Sが車を降りる。

 

僕とKは一度車内で顔を

見合わせた後、

 

無言でSに続いて外に出た。

 

S「おい、大丈夫か?」

 

Sはもうすでに倒れている人の

そばにしゃがんで声をかけていた。

 

仰向けに空を見上げるその人は、

フルフェイスのヘルメットをしていた。

 

ガタイが良く、

男性のようだった。

 

声をかけても反応がないと知ると、

 

Sは顎とヘルメットの隙間に

掌を差し込んだ。

 

S「おい。お前らぼーっとすんな。

K、救急車と警察呼べ」

 

K「お、おう」

 

S「○○(僕の名前)

バイクを道の脇に寄せて、

 

車が来ないか見張ってろ」

 

「分かった」

 

僕は周りを見回す。

 

(続く)言伝 2/4へ

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