あの曲が流れる度に

公園

 

私は“嫌いな曲”がある。

 

『おとぎ話のような~子供の世界~素敵な世界~』という歌詞のアレ。※文末に参考有り

 

27歳か28歳の頃、当時働いていた職場の近くに、そこそこ広い公園があった。

 

仕事終わり、薄暗い中で公園の横の道を歩いていた。

 

公園を左側にして歩いていると、突如頭の中であの曲が流れた。

 

いきなりだったけれど気にしないで歩いていたら、視界の左側の端で何かが動いた。

 

そちらを向くと、公園の中で複数の子供が楽しそうに遊んでいる。

 

「ああ、塾帰りか何かで遊んでるのかな?」

 

そんな風に思ったのを覚えている。

 

走り回って鬼ごっこでもしているような雰囲気。

 

それぞれ子供達は満面の笑みで走り、はしゃいでいる。

 

ただ、声が全く聞こえない。

 

すぐ側を走る車の音などは聞こえるのに、子供達の声だけが全く聞こえない。

 

おかしい。

 

あれだけ走り回っているのに、足音はおろか、息遣いすら聞こえない。

 

その違和感に気付いた時、子供達の方を見るのが嫌になった。

 

そのままやり過ごそうと思った私は、足早にその場を去ろうと歩調を早める。

 

少し歩いたところで爪先が転がってる小石を捉え、蹴る形になる。

 

カツッ、カツッ、カカッ・・・。

 

蹴飛ばした小石が音を立てながら、数回跳ねて止まる。

 

その時に何故か、「ヤバい!」と思った。

 

そして公園に目をやると、さっきまで走り回っていた子供達が皆その場に立って、満面の笑みをこちらに向けている。

 

ギョッとして一度視線を外して再び公園を見ると、子供達は公園と公道の間にある柵の所まで移動して来ていて、やはり満面の笑みでこちらを見ている。

 

私は悲鳴を上げそうになったけれど、なんとなく次に視線を外したら良くないことになると思ったので、視線はそのままに。

 

公園が見えなくなるまで、よそ見の状態で歩いて行った。

 

ただ、そのまま真っ直ぐ帰ってしまうと家に連れ込みそうな気がして、念の為にとコンビニに寄ってウロウロしてから帰宅した。

 

鍵を開けて部屋に入る前に、扉の横に置いている塩を鷲掴みして両方の肩からかけ、それから部屋に入った。

 

余談になるけれど、当時は家の入口に盛り塩を作る為に、ガスなどのメーターボックスの扉内に粗塩をフライパンで炒ったものをタッパーに入れて置いていた。

 

その日以来、その公園には近付かない。

 

ただ、冒頭で述べたあの曲が流れる度に、満面の笑みを浮かべてこちらを見る子供を見かけるようになった。

 

※参考

It’s a Small World』につけられた日本語歌詞としては、若谷和子による『小さな世界』と、小野崎孝輔による『こどものせかい』(子供の世界)の二つが特に有名。件の話では、後者の『こどものせかい』。※リンク先はGoogle検索結果

 

(終)

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