座敷ばあちゃん(前編)

今から14年前、長男を出産したときの話。

 

私は実家のすぐ近くに住んでいて、

旦那は半マスオさん状態。

 

お腹が重たくなってきた7ヶ月頃、

実家が近所にある同級生のYちゃんが

里帰り出産で帰ってきた。

 

同じ病院で産む予定だったし、

「奇遇だね~」なんて言い合い、

仲間が出来て嬉しかったし、

なんとなく心強かった。

 

1ヵ月程してYちゃんが、

一足先に陣痛が来て入院した。

 

わざわざ電話をくれて、

「落ち着いたら必ず連絡するからね」

と言っていたのに、

丸1日経っても連絡が来ない。

 

私も2ヶ月後には出産予定で、

とても他人事には思えず、

何度もYちゃんの家に

電話してみたけど誰も出ない。

 

微弱陣痛で長引いてるのかも・・・と、

待ってみたけど、

2日経ち、3日経ち、さすがに心配もピークを迎え、

私も通っていた入院先の病院に行ってみた。

 

ナースステーションで、

「Yちゃんのお見舞いに来たんですが」

と聞いたところ、

「面会謝絶です」と言われ、

ヘタヘタと座り込んでしまった。

 

付き添って来てくれた母と看護師さんに

支えられて処置室に連れて行かれたら、

たまたま私の主治医の院長先生がいた。

 

Yちゃんの主治医も同じだった。

 

先生にYちゃんが友達であることを伝え、

様子を尋ねた。

 

先生は色んな意味でちょっと考えていたが、

「私の口からYさんの状態を

話すことは出来ないから」と、

Yちゃんに付き添っていたおばさんを呼んでくれた。

 

おばさんは、「Rちゃん(私)

心配かけてごめんね」と言ってから、

先生をチラッと見た。

 

目の前に出産を控えた私に

聞かせていいものかどうか、

という意味だったと思う。

 

先生は、「何もわからないで、ただ不安を

増幅させるよりは事情を知った方がマシ」

と判断したようだった。

 

Yちゃんは酷い難産の途中で意識を失ったまま、

未だに目を覚まさないということだった。

 

重い妊娠中毒症だった。

 

出産前の検診では異常がなかったそうで、

普通にお産は始まるはずだった。

 

確かに元気に出かけて行ったんだもの。

 

ひとつ救いだったのは、

赤ちゃんはとても元気に生まれて、

新生児室のガラス越しに会うことが出来た。

 

話を聞いたときは恐怖で震えたけど、

赤ちゃんを見て、ものすごく勇気が出た。

 

私も、何があっても、お腹の子だけは

元気に産む義務があるんだと強く思った。

 

それでも、私の気分は浮いたり沈んだり。

 

家族やYちゃんのおばさんにも

心配かけてしまった。

 

結局、Yちゃんは2週間も眠り続けた。

 

(続く)

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