何かを引きずるような音が気になって

怪異は、夜に起きる方が

一般的に知られているが、

 

この話は白昼に現れた

怪異の話だ。

 

怪異・・・

 

もしかしたら怪異では

無いのかも知れないほど、

 

リアルな体験だったという。

 

俺の妹の友人Aが、

 

まだ小学校2年生の時

の話だという。

 

その日は、良く晴れた

暑い日だったという。

 

Aが弟と一緒に

庭で遊んでいると、

 

ズズッズズッという、

 

何かを引きずるような

音が聞こえてきた。

 

何の音かと気になって

視線を巡らせると、

 

庭先にある家の門の前に、

一人の男が現れた。

 

男が動くたびに、

 

ズズッズズッという音が

していたのだが・・・

 

その男の様子が

尋常では無かった。

 

男は血しぶきでも浴びたかのように

赤黒い液にまみれていて、

 

その顔は気持ちが悪いくらいに

 

ニヤニヤと歯を覗かせて

笑っている。

 

男が徐々に

全身を現し始めると、

 

今度は、男の手元が

見えてきた。

 

なんと、

 

男は血まみれの女を

引きずって歩いていたのだ。

 

力なく垂れたその手からは

生が感じられず、

 

男が女の手を引っ張ると、

ズズッズズッと音がしている。

 

さすがに怖くなったAは

父親を呼びに行くが、

 

飛び出して来た父親が

いくら辺りを探しても、

 

そんな男の姿もなく、

 

血まみれの女を

引きずっていたような痕跡も、

 

一切無かったのだという。

 

(終)

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