仏さんが喜ぶと線香の灰は丸くなる

霊安室

 

小さい頃、祖父が病院で亡くなった。

 

両親と駆けつけた時には、もう霊安室に移されていた。

 

両親はじめ、親戚みんなが慌ただしくする中、どういうわけか俺だけが霊安室に残されることになった。

 

「線香は絶対に切らさんようにね」

 

そう念を押され、俺は素直に線香をじっと見つめていた。

 

どれぐらい経っただろうか……。

 

ふと祖父の方に目をやると、ベッドからなぜか手が出ていた。

 

俺は子供心に「こりゃいけん。ベッドの中に戻してあげないと」と思って、祖父の手を布団の中に戻そうと近づいていった。

 

そしてまさに祖父の手に触れようとした瞬間、ピクッと祖父の手が動いて、布団の中に戻った。

 

俺はびっくりして、声も出なかった。

 

それからしばらくして、両親や親戚たちが戻ってきた。

 

「偉かったねぇ。一人で留守番できたねぇ」

 

おばさんたちがそう言いながら褒めてくれたが、その中の一人がふと線香に目をとめて言った。

 

お、線香の灰が折れんと蚊取り線香みたいに丸まっちょる。これって仏さんが喜んだ時になるっちゅうんよ。私ゃ初めて見たわぁ。坊がよう仏さん守っとったけぇじゃろう」

 

そう言って、俺の頭を撫でてくれた。

 

俺はその時、たぶんニカッと笑ったと思う。

 

(終)

AIによる概要

この話が伝えたいことは、「死」というものがただ恐ろしい終わりではなく、残された者との間に静かな交流や余韻を残すものでもある、ということです。

幼い語り手が祖父の死に直面しながらも、怖がることなく線香を守り続けたこと、そして祖父の手がふと動いて自ら布団に戻るという不思議な出来事。それはまるで祖父が「もう大丈夫だよ」と最後のメッセージを伝えてくれたようにも感じられます。その後、親戚たちが語る線香の灰の様子は、語り手の行動が祖父に届き、安らぎを与えたという証のようでもあり、子どもの素直な心と故人の思いが通じ合ったことが描かれています。

この話は、死者との別れの中にも小さな奇跡や心の通い合いがあること、そして幼い子どもであっても、ちゃんと大切な人を見送る力があることを、静かに、でも確かに伝えてくれています。

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