ずっと昔から取り壊されない家屋の怪 1/2

廃屋

 

僕は高校生の頃、

家庭のとある事情から、

 

朝刊の配達のアルバイトを

余儀無くされていました。

 

真夜中から早朝にかけての仕事なので

変に想像力が働き、

 

昼間に見てもなんでもないような場所でも

不気味に感じたものでした。

 

ただ、例外的に、

 

『昼間に見ても不気味に感じる場所』

 

も、ありました。

 

僕の配達ルートでは無いのですが、

 

ちょうど僕が配達している地域に、

いわくつきの廃屋がありました。

 

その廃屋には遡って15年は

人が住んでいない、

 

ボロボロの民家です。

 

たまたまその廃屋の隣家に

配達しなければならず、

 

いつもその廃屋を横切る度に

(おぞ)ましい思いをしていました。

 

ある日、いつもの様にその廃屋の隣家に

配達するため廃屋を横切ろうとした時、

 

嫌な予感が頭を過ぎりました。

 

廃屋の門前に電柱があるのですが、

その陰に子供らしき影がありました。

 

その子供は電柱から身体の半分だけを出し、

こちらを見ています。

 

僕は固まりました・・・

 

すると、その子供は突然、

 

「お父さん」と言い、

僕の背後を指差します。

 

『何や、親子で夜中の散歩か・・・』

 

安心して後ろを確認すると、

 

僕の後ろには4メートル程ある巨大な影が

立ちはだかっていました。

 

「あははは!」

「あははは!」

「あはははは!」

 

子供の形をした何かが

いきなり大声で笑い出し、

 

僕は我に返ってバイクを思い切り

吹かして逃げました。

 

それ以来、あの廃屋には

寄り付きたくもありませんでした。

 

しかしながら・・・

 

あの廃屋でのおかしな体験から2年後。

 

僕はすっかりあの恐怖感を

忘れてしまっていました。

 

体験はしたが、

 

あんなに怖かったのは

自分がガキだったからじゃないか、

 

とか自分の中であの体験から

真実味が薄れてしまっていたのです。

 

ある日、恐怖好きの友人に

その事を話すと、即答で、

 

「行ってみようや!」

 

という返事が返ってきました。

 

予感はしていたし、

覚悟もしていました。

 

むしろ、

 

その返事を待っていたと言っても

過言ではありませんでした。

 

計画はその日の夜中に決行され、

以前あの体験をした時間帯、

 

いわゆる丑三つ時には、

 

僕を含む友人三人組(A、B、僕)は、

問題の廃屋の門前に立っていたのです。

 

決まり事のように僕が先頭に立ち、

その門を開けようと手をかけたところ、

 

門は意外とすんなりと開きました。

 

足を踏み入れるか、否か・・・

そう考えていた矢先、

 

友人の一人が背後で、

 

「ひゃあ!」

 

と、すっとんきょうな声をあげたので驚き、

振り返ると二人とも腰を抜かして座り込み、

 

さらには僕の背後を指差して、

言葉にならない呻きをあげているのです。

 

それを見た僕はすっかり参ってしまい、

とても振り向く気になどなれず、

 

二人の手を引っ張って、

引きずりながら逃げました。

 

しかし、二人を引きずって

逃げ続けることはできず、

 

途中でAとはぐれてしまいました。

 

僕とBはキチガイ地味た恐怖に

勝つ事ができず、

 

結局はAを探しに行くことなしに、

各々の自宅へ帰りました。

 

空はもう白んで、

太陽が見え始めていました。

 

翌日、学校に登校すると、

 

AもBも変わりなく登校していたので、

昨夜の出来事について尋ねてみました。

 

すると、

AもBも口を開こうとしません。

 

Aに至ってはその日を境に、

なんとなく疎遠になってしまいました。

 

というより誰とも絡まなくなり、

 

例の廃屋での夜の一件から

一週間もする頃には、

 

学校に来なくなりました。

 

A一人を放置したことに

責任感を感じていた僕は、

 

Bに「Aの家にお見舞い」に

行くことを提案し、

 

その日の夕方に二人でA宅へ

行くことになりました。

 

(続く)ずっと昔から取り壊されない家屋の怪 2/2

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