呪う女 1/18

小学生の頃、学校の裏山の奥地に、

俺達は秘密基地を造っていた。

 

秘密基地っつっても結構本格的で、

複数の板を釘で打ち付けて、

雨風を防げる3畳ほどの広さの小屋。

 

放課後にそこでオヤツ食べたり、

エロ本読んだり、

まるで俺達だけの家のように使っていた。

 

俺と慎と淳と犬2匹(野良)

そこを使っていた。

 

小2の夏休み、秘密基地に泊まって遊ぼう

と言うことになった。

 

各自、親には「○○の家に泊まる」

と嘘をつき、小遣いをかき集めて、

オヤツ、花火、ジュースを買った。

 

修学旅行よりワクワクしていた。

 

夕方の5時頃に学校で集合し、

裏山に向かった。

 

山に入ってから一時間ほど登ると、

俺達の秘密基地がある。

 

基地の周辺は、

2匹の野良犬(ハッピー♂タッチ♂)

縄張りでもある為、

 

基地に近くなると、

どこからともなく2匹が、

尻尾を振りながら迎えに来てくれる。

 

俺達は2匹に「出迎えご苦労!」

と頭を撫でてやり、

うまい棒を1本ずつあげた。

 

基地に着くと荷物を小屋に入れ、

まだ空が明るかったので、

すぐそばにある大きな池で釣りをした。

 

まぁ釣れるのはウシガエルばかりだが。

(ちなみに釣ったカエルは犬の餌)

 

釣りをしていると、

徐々に辺りが暗くなりだしたので、

俺達は花火をやりだした。

 

俺達よりも、2匹の野良の方が

ハシャいでいたが。

 

結構買い込んだつもりだったが、

30分もしないうちに花火も尽きて、

俺達は一旦小屋に入った。

 

夜の秘密基地というのは皆初めてで、

山の奥地ということで、街灯もなく、

月明りのみ。

 

聞こえるのは虫の鳴き声だけ。

簡易ライト一本の薄明るい小屋に三人。

 

最初は皆で菓子を食べながら、

好きな子の話や先生の悪口など喋っていたが、

 

静まり返った小屋の周囲から

時折聞こえてくる、

「ドボン!」(池に何かが落ちてる音)や、

「ザザッ!」(何かの動物?の足音?)に、

俺達は段々と恐くなって来た。

 

次第に、「今、なんか音したよな?」、

「熊いたらどーしよ?!」など、

冗談ではなく本気で恐くなりだしてきた。

 

時間は夜9時。

 

小屋の中は蒸し暑く、蚊もいて、

眠れるような状況では無かった。

 

それよりも、山の持つ独特の雰囲気に

俺達は飲まれてしまい、皆、来た事を

後悔していた。

 

明日の朝までどう乗り切るか、

俺達は話し合った。

 

結果、小屋の中は蒸し暑く、

周囲の状況も見えない(熊の接近等)為、

山を下りる事になった。

 

もう内心、一時も早く家に帰りたい!

と俺は思っていた。

 

懐中電灯の明かりを頼りに足元を照らし、

少し早歩きで俺達は下山し始めた。

 

5分ほどはハッピーとタッチが、

俺達の周りを走り回っていたので心強かったが、

少しすると2匹は小屋の方に戻っていった。

 

普段何度も通っている道でも、

夜は全く別の空間にいるみたいだった。

 

幅30センチ程度の獣道を足を滑らさぬよう、

皆無言で黙々と歩いていた。

 

そのとき、慎が俺の肩を後ろから掴み、

「誰かいるぞ!」

と小さな声で言ってきた。

 

俺達は瞬間的にその場に伏せ、

電灯を消した。

 

耳を澄ますと、確かに足音が聞こえる。

「ザッ、ザッ」

二本足で茂みを進む音。

 

その音の方を目を凝らして、

その何者かを捜した。

 

俺達から2、30メートル程離れた所の茂みに、

その何者かは居た。

 

懐中電灯片手に、もう一方の手には

長い棒のようなものを持ち、

 

その棒で茂みを掻き分け、

山を登っているようだった。

 

俺たちは始め恐怖したが、

その何かが人間であること。

 

また、相手が一人であることから、

それまでの恐怖心はなくなり、

俺たちの心は幼い好奇心で満たされていた。

 

俺が「あいつ、何者だろ?尾行する?」

と呟くと、二人は「もちろん」と言わんばかりの

笑顔を見せた。

 

微かに見える何者かの懐中電灯の明かりと、

草を掻き分ける音を頼りに、

俺達は慎重に慎重に後を付けだした。

 

その何者かは、その後20分程、

山を登り続けて立ち止まった。

 

俺達はその後方30メートル程の所に居たので、

そいつの性別はもちろん、

様子等は全くわからない。

 

微かな人影を捕らえる程度。

 

そいつは立ち止まってから、

背中に背負っていた荷物を下ろし、

何かゴソゴソしていた。

 

「アイツ一人で何してるんだろ?

クワガタでも獲りに来たんかなぁ・・・」

と俺は言った。

 

「もっと近づこうぜ!」

と慎が言う。

 

俺達は枯れ葉や枝を踏まぬよう、

擦り足で身を屈ませながら、

ゆーっくりと近づいた。

 

俺達はニヤニヤしながら近づいていった。

 

頭の中で、その何者かに

どんな悪戯をしてやろうかと考えていた。

 

その時、

 

「コン!」

 

甲高い音が鳴り響いた。

心臓が止まるかと。

 

「コン!」

 

また鳴った。

一瞬何が起きたか分からず、

淳と慎の方を振り返った。

 

すると淳が指を差し、

「アイツや!アイツ、なんかしとる!」と。

 

俺はその何者かの様子を見た。

 

「コン!コン!コン!」

何かを木に打ち付けていた。

 

いや、手元は見えなかったが、それが

呪いの儀式というのはすぐにわかった。

 

と言うのも、この山は昔から

藁人形に纏わる話がある。

 

あくまで都市伝説的な噂だと、

その時までは思っていたが。

 

(続く)呪う女 2/18へ

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One Response to “呪う女 1/18”

  1.   より:

    あれ?
    この子たちは確か小学5年生だった筈だけど

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