怖い話をしてる最中に

僕がまだ高校生だった冬、

まあまあの進学校だったため、

 

週に三回、選択者だけの補習が

9時近くまでありました。

 

その日は英語の補習で、

男が僕を入れて4人、女3人、

出来の悪い連中で授業を受けていました。

 

出来が悪いせいで、普段は

9時を過ぎる事が多かったんですけど、

 

その日は何故か、

みんなサクサクと問題が解けて、

補習は8時半に終わりました。

 

家に帰るのもだるいと言う事で、

みんなでダベることに。

 

そうやって喋っているうちに、

「怖い話をしよう」

ということになりました。

 

一人一人順番に、

知っている怖い話をしていきました。

 

二人目が話し終わり、

次は友人のTの番です。

 

「これ、A(僕のこと)から聞いた

話なんやけど―」

 

そう言ってTが話し始めた話を聞いて、

僕は笑いそうになりました。

 

彼が話そうとしていた話は、

最後に大声を出して驚かすという、

よくあるオチのものだったからです。

 

オチを知っている僕は、

みんなどんな反応をするか楽しみで、

あまりTの話を聞いていませんでした。

 

しかし、もう終わってもいいはずなのに、

Tは長々と話を続けています。

 

話の内容を聞いてみると、僕が話したのと

少し違うことに気が付きました。

 

こいつ、アドリブなんか入れおって・・・

いつからそんな賢くなったんだ・・・

 

と、僕はみんなの反応がますます

楽しみになってきました。

 

笑うのを堪え、Tの顔を見ました。

 

あ、やばい・・・ 

 

一瞬にして、僕は

恐怖で一杯になりました。

 

Tはただ一点を見つめ、まばたきもせず

話し続けていました。

 

そんなTを見たのは初めてでした。

 

話の内容も妙にリアルで、

グロテスクな部分も多く、

 

一人の女の子はすでに耳を塞いで

下を向いていました。

 

本当にやばいかもと思い、僕は

「俺が話したのと違うやん」と言って

Tの話を中断させようとしましたが、

 

Tは僕の声など聞こえないという風に

話を続けていました。

 

他の友達も、Tの異変に気付き始めました。

 

僕は必死に話を止めさせようとしましたが、

Tは話し続けます。

 

他の友達も段々怖くなってきて、

過呼吸になった子もいました。

 

本当にまずいと思った僕は、

「お前、ホントもうやめろって」

と大声で叫び、Tの肩を強く掴みました。

 

その瞬間、Tが

「キャハハハハハハハハ」

と甲高い声で笑い出したかと思うと、

 

今度は全身の力が抜けたように腰から倒れ、

机に額を強く打ち付け、動かなくなりました。

 

僕たちはどうしていいか分からず、

ただTを見ていました。

 

するとTはゆっくり僕たちの方を向き、

「・・・吐きそう」と、

歯をガタガタいわせながら言いました。

 

Tはトイレで何度も嘔吐し、何人かの友人に

支えられ帰っていきました。

 

あれがいったい何だったのか、

今でも分からないままです。

 

(終)

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