四次元の世界と繋がる木 2/4

ババアの住む寺は田舎だったけど、

人だかりがあってすぐに分かった。

 

二時間位待ってようやく寺の中に

入れたんだけど、

 

ババアの部屋は

相談者で溢れている。

 

驚いた事に、

ババアは人が沢山いるのに

相談に答えていた。

 

でも、相談者は何も語っていない。

 

何も語っていないのに、

相談者の関係者の名前を

言ったりしている。

 

どうやら、離婚の縁切り相談なんかも

やっているようだった。

 

周りの人は名前は聞こえるが

イマイチ内容は理解出来ず、

プライバシーは守られている。

 

このババア・・・本物か?

そう思った時、

 

ババアがこちらを向いて

舌打ちをした。

 

「この野郎ども!

厄介なモノ持って来やがって!

肝試しなんてやるもんじゃないよ」

 

アシスタントなど一人もいない。

アポも取っていない。

俺は何も喋っていない。

 

なのにババアは、

全て見抜いているような

口振りだった。

 

「いいか、よく聞けよ。

今から札書いてやる。

 

それを持って、

肝試しに行った8人全員で川に行って、

ドクロと札を一緒に流せ!

 

絶対後ろ向くなよ!

分かったか?

五千円置いてとっとと帰れ!」

 

ババアは、チラシの裏に

変な梵字みたいなのを書いてよこした。

 

俺達は狐につままれたように

キョトンとしたまま五千円を置いて、

一言も喋らないまま寺を出た。

 

「インチキだろ?」

 

「でも、ドクロとか8人とか・・・

ズバリだったよね?」

 

結果として、ババアを信じる事に

するしか無かった。

 

何が、どうとんでもないのか

も分からず、

 

俺達は8人を集めて

川に出掛けるしか無かった。

 

ババアの所に行かなかった5人に、

経緯を説明した。

 

「いいか?絶対振り向くなよ?

ヤバイらしいぞ。あと、みんな走るなよ!

慌てて転んだら大変だから!」

 

そんな説明をしていると、

一人だけ聞いてない奴がいる。

 

「ヨッシー!聞いてるのか?

振り向いたら大変な事になるらしいぞ?

大丈夫か?」

 

ヨッシーは返事をせず、

ヘラヘラしていた。

 

「よし!じゃあ流すぞ?いいか?

流したら直ぐに回れ右だぞ!

振り向くなよ?走るなよ!」

 

俺はそう言って、

ドクロの写真と梵字を書いたチラシを

川に流したんだ。

 

みんなは同時に回れ右をして、

ゆっくりとその場を後にした。

 

15歩位進んだところで、

ヨッシーがバカをやりだした。

 

「俺は桜の木に登っても平気だったんだよ!

呪いなんて怖くねぇ!へ!」

 

そう言って後ろを振り向いている。

 

「ヨッシーやめろ!

ヤバイよ!やめろって!」

 

みんなが制止するのを無視して、

ヨッシーが振り向いている。

 

「へ?あれ?あれなんだ?

ぉぁ・・・・・・・・・・」

 

ヨッシーが黙り込んでしまった。

 

「ヨッシー!ヨッシー!

どうしたヨッシー!」

 

みんなは歩みを止めない。

ヨッシーは付いて来ない。

 

「う、うわあー」

 

誰かが走り出した。

つられて全員走り出した。

 

「うわあーああああー」

 

駐車場に着いたがヨッシーがいない。

 

「おい、ヨッシーは?

ヨッシーどうしたんだよ」

 

陽が沈み始めて、

辺りは暗くなりだしている。

 

誰も怖くてヨッシーを

探しに行けない。

 

「俺、明日早いから・・・

お先に・・・」

 

一人、また一人と消えていって、

 

俺とカメラの持ち主だけに

なってしまった。

 

「どうする?探しに行くか?」

 

「正直・・・怖い・・・無理」

 

「あいつ・・・何を見たんだ?」

 

俺達は慎重に話し合い、

 

あと30分待って

ヨッシーが帰って来ない場合は、

帰る事にした。

 

約束を破ったヨッシーが悪い、

というのが大義名分で、

 

ババアの「振り向くと大変な事になる」

という言葉が、

 

どうしてもヨッシーを探す気分に

なれなかった。

 

結局30分しても、

ヨッシーは帰って来なかった。

 

俺達は仕方なく帰ったんだ。

 

翌日昼休み、

職場からヨッシーの家に電話をした。

 

意外にもヨッシーは直ぐに出た。

 

「ヨッシー!昨日ごめん・・・

大丈夫だったのか?」

 

「何が?」

 

「何が?って・・・

昨日どうやって帰ったんだよ?」

 

「どうやって?バイクでだよ」

 

「いや、それは分かるけど」

 

まるで会話が噛み合わない。

 

仕方なく、仕事が終わってから

カメラの持ち主の奴と二人で、

ヨッシーの家に行ってみた。

 

「ヨッシー、昨日あれからどうしたんだよ、

心配したんだぞ?」

 

「俺さあぁぁ・・・へへっ・・・

へへっ・・・・・・・」

 

「ヨッシー、お前なんかおかしいぞ?

シンナー吸ってるのか?」

 

「へへへ」

 

「ヨッシー昨日何か見たんだな?

何を見たんだ?ヨッシー?」

 

「僕なーんも見てない・・・

見てないよ、見てないもん」

 

(この日からヨッシーは

池沼みたくなってしまった)

 

シンナーのせいかもしれないけれども、

自分の事を僕とか言い出したり、 

ヨダレを垂らしたりしたりして、

俺達を困らせた。

 

(続く)四次元の世界と繋がる木 3/4へ

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