作り話と実話のはざまで 3/3

ロウソク

 

なぜ猟銃を所持していたのかは

分からないが、

 

うちの親の話によると、

 

ヨシ君の親が趣味で猟をしていて、

それでその猟銃を使ったのだと言う。

 

そうして、

 

俺の中での○○神社廃屋事件は

幕を閉じた。

 

話し終えてロウソクの火を消すと、

深夜2時をまわっていた。

 

そう、ちょうど丑三つ時。

 

みんなの話が一周したので、

友人が新しい怖い話を始めた。

 

そうやって十話ほどの怖い話を終え、

 

百物語風の怪談肝試しは終わり、

最後のロウソクが消された。

 

だからと言って、

漆黒の部屋で何かが起きたわけでもなく、

 

男女3人ずつの部屋で、

エロスな出来事が起きたわけでもない。

 

全員が節度を守り、

理性を保って、

 

明け方まで眠い目を擦って起き続け、

 

俺はお目当ての女の子をどうにか送る

という状況にこぎつけた。

 

二人でタクシーに乗り、

 

彼女の家の近くまで到着し、

タクシーを降りる。

 

すると彼女が、

 

「少し話したい事があるから」

 

と言い出した。

 

俺は大きな期待で胸が跳ねたが、

 

彼女の話したい事は、

俺が意図する事とは全く別だった。

 

しばらく押し黙ったままでいた彼女は、

 

「さっきの怖い話の事だけど・・・」

 

と切り出した。

 

俺は、怖い話の事など

すっかり忘れていたので、

 

拍子抜けして、

 

「ああ、それがどうしたの?」

 

などと聞き返した。

 

すると彼女は、

 

「あの話、嘘でしょ?」

 

と言ってきた。

 

実は・・・さっきまで語ってきた話は、

9割が作り話だ。

 

ヤッちゃんの両親は健在だし、

お姉さんはちょっと変だけど元気だ。

 

廃屋があったのは本当だが、

そこで何かが起きたわけじゃない。

 

新聞紙の散乱する部屋はあったが、

結局は何も起きず、

 

現在は取り壊されて、

ただの空き家になっている。

 

だが、

一つだけ本当の事がある。

 

それは、ヨシ君が猟銃で

自殺したという事だ。

 

そして問題なのは、

 

なぜ彼女はその話が嘘だと見抜いたのか、

という事だ。

 

俺は動揺しながらも、

 

「なんで分かったの?

俺、嘘つくの下手だからかなぁ?」

 

などと笑うと、

彼女は真面目な顔で、

 

「あの話・・・

二度としない方がいいよ」

 

と言う。

 

何か、気迫のようなものに

押されたのかも知れない。

 

俺が何も言えずにいると、

彼女は続ける。

 

「○○君(俺)が話している間ずっと、

 

○○君の後ろで『嘘つき・・嘘つき・・』

って言っている人がいたの。

 

気づかなかった?

ちょっと太めで天然パーマの子。

 

あれがヨシ君でしょ?

 

彼、怒ってたから、

もう二度と話さない方がいいよ」

 

俺は恐怖しながらも彼女の裏を取ろうと、

ヨシ君の特徴を聞いてみる。

 

が、彼女の話す特徴は、

ヨシ君の特徴とピタリと合う。

 

メガネで、太めで、天パーで、

鼻の横に大きなホクロ。

 

垂れ下がった目。

 

まだあったと思うが、

 

ヨシ君を直接知っていたという

可能性を除けば、

 

彼女の言う事が本当だとなる。

 

もう春だから、

そろそろ1年になる。

 

それまで誰にもこの話は

話さなかったのだが・・・

 

ヨシ君は怒っているだろうか?

 

俺の身に何か起きるのだろうか?

 

今は仕事も何もかもが上手くいかず、

自暴自棄になっている。

 

何か起きたなら、

それはそれで、もうどうでもいい。

 

もし死ぬのだったら、

ありえない現象を見てから死にたい。

 

もう、どうでもいい。

 

そして最後に、

これは本当の話です。

 

(終)

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