白雪姫になった気分の私
彼と初めての旅行です。
旅の疲れなのか、
彼の車で少し眠ってしまったみたい。
優しい彼は眠っている私に、
毛布をかけてくれていました。
彼の優しさに甘えて、
後部座席でニヤけながら、
もうちょっと眠ったフリをしてよっと。
ウフフフ。
どうやら車は目的地に到着したようです。
それでも眠ったフリを続ける私を、
そっと抱き起こして運んでくれる彼。
そこは素敵な森の中。
木の葉のベッドの上で、
まだまだ眠ったフリの私。
この状況は、
王子様を待つ白雪姫みたいです。
さあ、王子様、
早くキスをして。
そして、私の周りには、
たくさんの動物たちが集まってくる。
(終)
解説
これは、
楽しい旅行の話ではない。
彼は語り手である彼女を殺し、
その遺体を人里離れた森に
埋めようとしているのだ。
彼女は意識朦朧となりながらも、
まだ生きているのか、
それとも幽霊となって
これらを感じているのか、
そのどちらなのかは分からない。
そして最後の一文。
『私の周りには、
たくさんの動物たちが集まってくる』
というのは、
メルヘンチック的な意味ではなく、
肉食系の動物が彼女の遺体を食べに
集まってきたということである。