強盗だと思った意外な結末

ドアノブ 玄関

 

あれは、今年の年始だった。

 

夜中に歩いて3分のコンビニまで、

酒を買いに行った。

 

難なく酒を買って、

寒いから一本空けながら帰っていた。

 

iPodで音楽を大音量で聴きながら。

 

ハイツまで帰ってきて、

部屋の鍵を開けて中に入った。

 

内側から鍵を掛けたと同時に、

 

ドアノブを外からガチャガチャと

激しく動かされた。

 

さらには、

ドアもドンドン!と強く叩かれて、

 

『ドアを開けた隙を狙う強盗か?』

 

などと思いながら固まっていたら、

10秒ほどで止んだ。

 

その間もずっと、

iPodからは音楽が流れていた。

 

死ぬほど怖かったので、

 

産後で実家に帰っている嫁に、

とりあえず電話で報告。

 

嫁と10分ほど電話で話しをし、

とりあえず警察に連絡する事になった。

 

警察に電話をすると、

 

「戸締りをしっかりして、

 

警察が行くまでは絶対に

家から出ないで下さい」

 

と言われた。

 

少し落ち着いて来たので

酒を飲んで待っていたら、

 

玄関のインターホンが鳴った。

 

モニターを見ると、

鳴らしたのは上の階の住人Rさん。

 

近所付き合い以外に、

たまに一緒に飲む仲。

 

が、状況が状況なので、

居留守を使ってスルーした。

 

すると5分後くらいに、

Rさんから携帯に着信が入った。

 

R「もしもし~

 

インターホン鳴らしても出なかったけど、

今からそっちで飲める?」

 

「ああ、実はかくかくしかじかで。

Rさんのところは何もなかった?」

 

R「いや特には」

 

「気をつけてくださいね。

もうすぐ警察来るはずです。じゃあ」

 

それからさらに5分後くらいに、

警察が到着した。

 

だが、

到着した警察の様子がおかしい。

 

インターホンを鳴らして、

こっちが応答する前にドアを叩きながら、

 

「○○(俺)さーん!○○さーん!

大丈夫ですかー!!」

 

と叫んでいる。

 

なんだろうと思って玄関に出てみたら、

 

ウチの玄関のドアと玄関前の通路と階段に、

真新しい血痕がべっとりと・・・

 

「お怪我は?心当たりは?

先ほどからこの血はありましたか?」

 

と怒涛の質問責め。

 

と同時に、

俺が疑われているような気もした。

 

とにかく順を追って話し、

血痕を見たのは今が初めてだと説明する。

 

「あ!そう言えば、

 

上の階のRさんが、

さっきウチのインターホンを鳴らした!

 

15分ほど前!

Rさんなら何か知っているかも!

 

もしかして・・・

この血痕はRさんの?

 

Rさん、襲われたんじゃ・・・」

 

警官を一人ウチに残し、

もう一人が上階のRさん宅へ。

 

しばらくして、

 

警官が血だらけのRさんと

上階から降りてきた。

 

Rさんは襲われたのではなく、

襲った方の人間だった。

 

諸々が終わってから聞いたが、

 

Rさんは交際していた女性を、

自室にて包丁で刺したらしい。

 

さっきは人を刺した事でスイッチが入り、

 

他に誰か刺そうと、

ウチのインターホンを押したらしい。

 

インターホンに出ないので、

 

電話をして上がり込み、

俺を刺すつもりだったとか・・・

 

別件とは言え、

俺が警察に連絡した事を知ると、

 

放心状態で自宅に居たらしい。

 

ただ、刺された女性は命からがら逃げ、

Rさんの部屋にはいなかった。

 

が、結果として、

 

刺された女性は駐車場に停めてあった

自分の車の中で絶命していた。

 

そして、

 

ウチの玄関のドアに付着していた

大量の血痕と、

 

被害者女性の血液が一致した。

 

ウチのドアノブから出た指紋も、

被害者女性のものだった。

 

俺が最初に強盗と勘違いしていたのは、

実は助けを求める彼女の・・・

 

(終)

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