代々受け継いできた爺ちゃんの山で

廃墟

 

うちの爺ちゃんは土地持ちで、

畑や田んぼ、山まで持っています。

 

爺ちゃんは関東T県のT市に住んでいて、

そのT市は本当にド田舎。

 

爺ちゃんの家の周辺半分は田んぼでした。

 

私の父が長男なので、

私たち一家は爺ちゃんの家に行くことが多く、

 

私は爺ちゃんの山を小さい頃から

よく登っていました。

 

爺ちゃんが所有している山は、

 

爺ちゃん自身が買った山が一つと、

爺ちゃんの二代前から持っている山の二つ。

 

私がよく登ったのは、

爺ちゃんが買った方の小さめな山でした。

 

これからするお話は、

私が小学校の高学年頃の出来事です。

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その怖いものは今もあります・・・

長年、同じ山ばかりで遊んでいた私は、

別の遊び場を欲しがっていました。

 

一緒に山へ遊びに行っていた一つ上の姉も

同じ様に思っていたらしく、

 

私たち二人は爺ちゃんのもう一つの山へ、

遊びに行きたいと思っていました。

 

以前に麓から見たことがあり、

 

買った方の山の二倍くらいの大きさで、

木々も鬱蒼としていました。

 

探検にはもってこいと言うことで、

 

爺ちゃんや父からは“危ないから行くな!”

と言われていたのを聞かず、

 

ある日に姉と山まで向かい、

そして探検を始めました。

 

その山は、

昼間なのに木々の影で薄暗く感じて、

 

気味悪いながらも冒険心をくすぐり、

奥へ奥へと足を運ばせます。

 

迷わない目印にと、

 

姉がチョークで木に一本線を

書いていたのを覚えています。

 

山を4分の1ほど登った頃でした。

 

姉が前方を指差し「家を発見!」と、

息の切れた声で軽快に言いました。

 

怖い話が姉妹で好きだったので、

 

ボロボロの空き倉庫や古いトンネルなどへ

肝試しによく行く私たちには、

 

恰好の肝試しスポットを見つけた

喜びが走りました。

 

「入ってみようよ」

「鍵かかってないといいね」

 

私たちはそんなことを話しながら、

早足にその家へ向かいました。

 

その途中に私は、

 

木と木の間に架かって繋がっている

縄のようなものを見つけましたが、

 

気にせずに姉の後ろを小走りで

付いていきました。

 

その家の周辺5メートルほどの範囲には木が無く、

代わりに背の高い草が生えていました。

 

草を掻き分けて家を目の前にすると、

 

遠くから見た時と比べて、

異様に威圧感というか重圧感というか・・・

 

そんな感じの雰囲気がありました。

 

姉は感じないのか、

相変わらずズンズンと進んでいって、

 

ドアと思しきところで、

ガタガタと扉を揺らし始めました。

 

「ダメだ。鍵閉まってるや」

 

姉はそう言って、

ため息を漏らしました。

 

私はその時、

 

内心「良かった・・・」と思い、

安堵のため息。

 

「窓とか、ないかな?」

 

姉はそう言うと、

またズンズンと別の方へ回り込んでいきます。

 

私は独りになるのが嫌で、

姉を追いかけようとした時でした。

 

背の高い草の隙間に、

 

人の頭のような黒いものが、

ゆっくりと移動しているのが目に入りました。

 

「・・・・・・!」

 

私は立ち尽くして、

その移動する頭を凝視していました。

 

そうしている間に、

 

姉が回り込んでいった私のいる側とは反対、

家の陰の方へゆっくりと移動していきます。

 

私は姉に危機が迫っているのを全身で感じ、

 

勇気を振り絞ってその移動する頭とは逆回りに、

姉のいる方へ回ろうとしました。

 

すると・・・

 

「いや~、やっぱそう上手くは

鍵開いてなかったよ」、と。

 

私は何も言わず姉の腕を掴み、

そして走り出しました。

 

振り向かないで走り、

 

縄の架かった木をくぐり抜けても、

まだ走り続けました。

 

その時、

 

戸惑いながら後ろを振り向いた姉が

悲鳴を上げた。

 

姉の悲鳴に、

私も思わず後ろを振り向いてしまいました。

 

さっきの移動する頭のようなものが、

 

まだゆっくりと家の周りを回るように

草の中を移動している。

 

草の薄いところをその頭が通った時、

私も悲鳴を上げました。

 

異常な程に髪の毛が長くて多く、

髪の裾から子供の脚のようなものが出ている。

 

それは化け物じみた、

髪の毛のオバケみたいなのものが見えたのです。

 

私たちは発狂せんばかりの心持ちで

必死に逃げました。

 

チョークの目印を辿りながら、

息を切らせて麓まで降りました。

 

下りとはいえ、

あの距離を全速力で走って来れるなんて・・・

 

火事場の馬鹿力とはこのことだと思います。

 

その後は家に逃げ帰り、

父に泣きついて事情を説明すると、

 

父は真剣な顔で話し始めました。

 

「・・・お父さんも、

その家の近くまで行ったことがある。

 

なんでか木に縄が架けてあって、

家の周りを円状に囲んでいた。

 

お父さんは怖くてそれ以上、

その家に近づけなかった」

 

私は父の話を聞いて、

ますます震えました。

 

縄が架けられていたのは『結界』のようで、

 

あの髪の毛オバケは結界から抜け出したくて、

草の中をぐるぐると回っていたのかも知れないと・・・

 

爺ちゃんが亡くなった後、

その山は手放してしまいました。

 

しかし、未だその家は、

爺ちゃんの家から歩いて行ける距離にあります。

 

正直怖い・・・

 

(終)

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