呪う女 13/18

電話を切った瞬間、

何故か胸騒ぎがした。

 

『中年女』

 

淳の言葉が、妙に気にかかりだした。

電話を切った後、しばらく考えた。

 

まさか、今更『中年女』が現れるはずが無い・・・

それにあいつは捕まったはず・・・

 

いや、釈放されたのか??

 

というか、今思えば俺達三人は、

『中年女』に何をしたわけでも無い。

 

ただ、『中年女』の呪いの儀式を

見てしまっただけなのに、

こちらの払った代償はあまりにも大きい。

 

偶然、夜の山で出会い、

いきなり襲われた。

 

俺達は何一つ『中年女』から奪っていない。

それどころか、傷付けてもいない。

 

『中年女』は俺達からハッピーとタッチを奪い、

秘密基地を壊し、何より俺達三人に

恐怖を植え付けた。

 

『中年女』がいくら執念深いといっても、

さすがにもう俺達に関わってくるとは思えない。

 

こんなことを思うのも何だが、怨むなら

写真の少女にベクトルが向くはず!

 

俺は強引に、俺自身を納得させた。

 

2日後、俺はバイトを休み、

本屋でエロ本を3冊買ってから、

淳の入院している病院に向かった。

 

久し振りに淳に会うというドキドキ感と、

淳が電話で言っていた事に対するドキドキ感で、

複雑な心境だった。

 

病院に着いたのは昼過ぎだった。

 

淳の病室は三階。

俺は淳のネームプレートを探し出した。

 

303号室の六人部屋に淳の名前があった。

一番奥、窓側の向かって左手に淳の姿が見えた。

 

「よう!淳、久し振り!」

 

「おう!まぢひさしぶりやなぁ!」

 

思ったより全然元気な淳を見て、

少し安心した。

 

約束のエロ本を渡すと、淳は

新しい玩具を与えられた子供の如く喜んだ。

 

そして他愛も無い話を色々した。

 

淳といると、小学生の頃に戻ったようで

とても楽しかったし無邪気に笑えた。

 

あっという間に時間は経ち、

面会終了時間が近づいてきた。

 

「んぢゃ、もうそろそろ帰・・・」

と俺が言いかけると、

 

「実はさぁ、電話でも言ったんだけど」

と淳が、真顔で何かを言いかけた。

 

「中年女の事だろ?」

と俺は言った。

 

すると淳は、

「気のせいだとは思うんだけど・・・

いつもこの時間に来るオバさんがいてさぁ・・・

何かこう・・・引っかかるっつーか・・・」

 

俺は、

「だから気のせいだって!

ビクビクすんなよ!」

と強気な発言をした。

 

すると淳は少しカチンときたのか、

「だから、勘違いかもしんねー

っつってんぢゃん!ビビりで悪かったな!」

 

空気が重くなった。

俺は空気を読み、淳に謝ろうとした。

 

その時、ガラガラガラ・・・

廊下に台車のタイヤ音が響いた。

 

淳が「来た・・・」と呟く。

俺は視線を部屋の入口に向けた。

 

ガラガラガラ。

台車は扉の前に止まったようだ。

 

そして、扉が開いた。

 

そこには、上下紺色の作業着を着た

オバさんが居た。

 

俺は、

「何だよ!脅かすなよ!

ゴミ回収のオバさんじゃねーか」

と、少し胸を撫で降ろした。

 

そのオバさんは、患者個人個人の

ごみ箱のゴミを回収しだし、最後に

淳のベットに近づいてきた。

 

淳が小声で「見てくれよ!」

俺はそのオバさんの顔をチラッと見た。

 

「・・・!」

俺は息を飲んだ。

 

似ている・・・

いや、『中年女』なのか?

 

俺は目が点になり、

しばらくその人を眺めていると、

 

そのオバさんはこちらを向き、

ペコリと頭を下げて部屋を出ていった。

 

淳が、

「どう?やっぱ違うか?!

俺ってビビりすぎ?」

と聞いてきた。

 

俺は、

「全然ちげーよ!

ただの掃除オバさんぢゃん!」

と答えた。

 

いや、しかし似ていた。

他人の空似なのか・・・?

 

「・・・んぢゃ、そろそろ帰るわ!

あんま変な事考えてねーで、

さっさと退院しろよ!」

 

と俺が言うと淳は、

 

「そだな・・・、あの女が

病院にいるわけねーよな。

お前が違うって言うの聞いて安心したよ。

また来てくれよ!暇だし!」

 

と元気よく言った。

 

俺は病室を出ると、

足早に階段を駆け降りた。

 

頭の中から、さっきのオバさんの顔が

離れない。

 

『中年女』の顔は鮮明に覚えている。

 

しかし、『中年女』の一番の特徴といえば、

イッちゃってる感だ。

 

さっきのオバさんは穏やかな表情だった。

 

もし、さっきのオバさんが『中年女』なら、

俺の顔を見た瞬間にでも奇声を上げ、

襲いかかって来てもおかしくない。

 

そうだ。

やっぱり他人の空似なんだ。

 

と考えつつ、なぜが病院にいるのが怖く、

早々に家路に着いた。

 

家に帰ってからも、

『中年女』=『掃除オバさん』

の考えは払拭しきれなかった。

 

やはり気になる・・・

 

その日は眠りに落ちるまで、

その事ばかり考えていた。

 

次の日、『掃除オバさん』の事が気になり、

俺はバイトを早めに切り上げ、

病院に行くことにした。

 

俺のバイト先からチャリで30分。

 

病院に着いた時には20時を回っていて、

面会時間も過ぎていた。

 

もう、『掃除オバさん』も帰っている事は

明白だったが、臨時入口から病院に入り、

とりあえず淳の病室に向かった。

 

(続く)呪う女 14/18へ

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