幽霊さんも会話に参加したかった?

ビデオカメラ

 

これは、放送局に勤めていた頃に不思議な体験をした話。

 

私は地方ラジオ局でディレクターをしていた。

 

その地域では、夏になると廃ビルで大掛かりなお化け屋敷が開催される。

 

私には霊感がなく、怖いのも苦手だったが、演者を引き連れて取材に行った。

 

地元では心霊スポットとして噂の廃ビル。

 

それに、なかなか凝ったお化け屋敷で怖かった。

 

演者たちもワーキャー言いながら、お化け屋敷をクリアする。

 

その後、演者4人で感想を収録した。

 

マイクを中央に固定し、囲む形で。

 

「怖かった!」

 

「ほんとに!汗だくですよー」

 

「わっ!ほんとだぁー」

 

「きゃっきゃっ♪」

 

現場では違和感なく終了した。

 

関係者から、昨夜に女の人の幽霊が出たとか、でもお祓いはきちんとしてあるだとか、雑談で裏話を聞いてから局に帰った。

 

そして、放送するための編集に取り掛かる。

 

2畳程しかない防音の編集ブースに入り、22時頃に作業をしていた。

 

だが、例の箇所で違和感を覚えた。

 

「怖かった!」

 

「ほんとに!汗だくですよー」

 

「わっ!ほんとだぁー」

 

「きゃっきゃっ♪」

 

ボリュームを上げると、小さく、微かに、Cの後に女の声が入っていた。

 

「私もそう思います」

 

はっきりと、そう聞こえた。

 

遠くからの声が入ってしまった感じではなく、マイクの近くで囁いたように。

 

マイクは演者たちの中央に固定していた。

 

つまり、誰もマイクには近づいていない。

 

何度繰り返し聞いても、「私もそう思います」が入っている。

 

2畳の密室で気づいてしまったので、私は悲鳴を上げてオフィスに走った。

 

勘違いであってほしいと思いながら他のスタッフ達にも聞いてもらったところ、「間違いないな・・・」とのことだった。

 

ゾッとした。

 

ただ、話の流れからして、「汗だくですよー」から「私もそう思います」なので怖くないのだが。

 

会話に参加したかった可愛い幽霊さんかな?

 

もちろん、その箇所はカットしてオンエアした。

 

(終)

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