山で遭遇した不思議な3つの出来事

登山

 

これは、私のお客さんの田中さんから聞いた3つの体験話。※仮名

 

田中さんの趣味は気軽にする山登り。

 

なんでも、山では何度か不思議なことに遭遇しているそうで。

 

◆1つ目のお話

 

車で県外まで行き、初めての山に登った時のこと。

 

山の中腹ぐらいだったらしいが、ふと山頂の方を見ようと上を見上げた時、一本の木に赤い色の何かがへばり付いているのが見えた。

 

高さは10メートルぐらい辺り。

 

目を凝らしてよく見ると、”天狗のお面”が一つ、木に結わえ付けてある。

 

「なんであんなところに?」

 

不思議に思いながらも、そのまま山頂まで登ってから下山の途についたそうで。

 

下山した後、山の近くに商店があったので、天狗のお面のことを聞いてみようと、田中さんは車を止めて商店に立ち寄った。

 

しかし、商店の中に入っても、店内には人の姿はない。

 

「ごめんくださ~い」

 

店の奥に声をかけたところ、「はい、は~い」と、お婆さんが奥から出てきた。

 

ただ、お婆さんに天狗のお面について話をした直後、首を傾げてお店の奥に引っ込んでしまった。

 

田中さんはお婆さんが再び出てくるのを待ったが、待てど暮らせど声をかけても出てくる気配はない。

 

結局は諦めて商店を出て、帰宅の途についたそうで。

 

◆2つ目のお話

 

早朝から近くの山を登りに行った時のこと。

 

普段から行き慣れた山だったそうだが、登り始めてすぐに、どうも足がもつれる感じがした。

 

「いや~、昨日飲み過ぎたかぁ?」

 

そう思いながらもさらに登ろうとしたが、やっぱり足がもつれる。

 

「今日は帰るか…」

 

登るのを諦めて山を下り始めると、今度は足がもつれることもなく、順調に下山することが出来たそうで。

 

しかし、家に帰ってから足元を確認すると、種類はわからないが”動物の毛”が付いていた。

 

「こういう時は登らない方がいいんだよ」

 

そう言いながら、ケラケラと田中さんは笑っていた。

 

◆3つ目のお話

 

近くの山へ山菜を採りに行った時のこと。

 

その時に限って驚くほど山菜を見つけ、山頂付近に着く頃には大量の山菜を採ることが出来た。

 

山頂付近の拓けた場所の岩に腰掛けて、タバコを一服する。

 

「いや~、ちょっと採りすぎたかなぁ」

 

思わぬ収穫にそう独り言を漏らすと、「そうだな」と耳元で男性の低い声が聞こえた。

 

ギョッとして背後を振り返るが、もちろん誰もいない。

 

田中さんは収穫した山菜の半分ほどを岩の前に置いた。

 

そして「すまんこって、半分お返ししますゎ」、そう言って下山し、無事に帰宅したそうで。

 

「怖くないんですか?」と田中さんに尋ねると、「ケンカさえしなきゃ大丈夫だよ」と言って、やっぱりケラケラと笑っていた。

 

(終)

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