親父

俺の親父は良い人とは言えないけど、

悪い人ってわけでもない。

 

お調子者で自分勝手で、頭も良くないけど

何故か友達は多い奴。

 

クラスに一人はいるだろ? 

親父は正にそのタイプ。

 

勉強はそこそこ出来るけど

対人スキル0の俺とは正反対。

 

正直言って、親子じゃなかったら

絶対接点なんてなかっただろうな。

 

でも仲が悪いわけでは決してなくて、

キャンプなんかにもよく連れてってもらってたし、

週末なんかほぼ毎週家族で出掛けてたから、

多分、良い父親なんだと思う。

 

まあ、遊園地のお化け屋敷で泣いた俺(当時3歳)に、

「もう連れて来んぞ!」って

マジギレした、なんて話もあるんだが。(笑)

 

それで、これは俺が小学校4年生くらいの時の話。

 

その頃の俺は、もう一人で寝られるようになってたんだが、

休みの日はいつも通り起きて、

その後、両親の布団に潜って二度寝する、

なんてことをやってたんだ。

 

その日も一度起きて母親の布団に潜り込んで、

俺・母・父の順で並んで寝てた。

 

二度寝してどのくらい経ったかわからないけど、

急にふっと目が醒めた。

 

目が醒めたって言っても、急に意識が戻った感じで

目は開けてなかった。

 

だけど、感覚で鼻を摘まれてることに気がついたんだ。

 

俺は、親父がふざけてるんだと思って

払い除けようとしたんだけど、

違和感がそれだけじゃないことに気がついた。

 

掌で口も塞がれてた。

何故か苦しいとか怖いとかは感じなかったな。

 

それより、起きてることがばれたらマズいと思って

目を閉じたままじっとしてた。

 

多分、30秒くらいはそのままだったんじゃないかな。

あの頃は肺活量凄かったし。

 

でもまあ流石に苦しくなって、出来るだけ自然に

寝返りをうつ感じで顔を背けた。

 

そしたら親父が小声で

「オキタカ・・・」って。

 

「起きたかー?(笑)」なんて

軽い感じじゃなくてさ。

 

寝返りうってからこっそり目を開けて、

今のはなんだったんだろうって考えてた。

 

そのうちに母親も起きて、

俺もタイミング見計らって起きた振りしたんだけど。

 

その他に変わったことは無かったし、

今も親子仲は悪くない。

 

この件で一番怖かったのは、

妙に冷静に空気読んでる俺自身なんだけどな。

 

(終)

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