呪いの「かんひも」にまつわる出来事 3/3

 

この出来事を書いているうちに

あらためて気になり、

 

急遽、母の実家まで行って

自分なりに調べてみました。

 

残念ながら、

爺ちゃんはすでに亡くなっているので、

 

文献と婆ちゃんの話からの

推測の域を出ませんが･･･

 

この歳になって久しぶりに、

辞書を片手に頑張ってしまいました。

 

結論から言うと、

 

どうやら『かんひも』は、

呪い系のようです。

 

それも、あまり良くない系統の。

 

昔、まだ村が集落だけで生活していて、

他との関わりがあまりない頃です。

 

僕はあまり歴史に詳しくないので、

時代などは分かりませんでした。

 

その頃は、

集落内での婚姻が主だったようで、

 

やはり『血が濃くなる』ということが

あったようです。

 

よく聞くように、血が濃くなると、

 

障害を持った子供が生まれて来ることが

多くありました。

 

今のように科学や医学が

発達していない時代。

 

そのような子たちは『凶子（まがご）』

と呼ばれて、

 

忌まれていたようです。

 

そして凶子を産んだ女性も、

『凶女（まがつめ）』と呼ばれていました。

 

しかし、やはり昔のことで、

 

凶子が生まれても、

生まれてすぐには分からずに、

 

ある程度成長してから

凶子と分かる例が多かったようです。

 

そういう子たちは、その奇行から、

 

やはりキツネ憑きなど、

禍々しいものと考えられていました。

 

そして、その親子共々、

 

集落内に災いを呼ぶとして

殺されたそうです。

 

しかも、その殺され方が、

凶女にわが子をその手で殺させ、

 

さらにその凶女も、

とても酷い方法で殺すという、

 

残酷なものでした。

 

あまり詳しいことは分かりませんでしたが、

 

これらが伝わっていないということは、

かなり酷い内容だったのではと。

 

しかし、凶女は殺された後でも、

集落に災いを及ぼすと考えられました。

 

そこで、

例の『かんひも』の登場です。

 

かんひもは先にも書いたように、

『髪被喪』と書きます。

 

つまりは『髪』の呪いで、

 

「喪（良くないこと・災い）」を

「被」せるという事です。

 

どうやら、

 

凶女の髪の束を使い、

凶子の骨で作った珠で留め、

 

特殊な呪いにしたようです。

 

そして、それを隣村の地に埋めて、

災いを他村に被せようとしたのです。

 

腕輪の形状をしていたものの、

 

元々はそういった呪詛的な意味の方が

大きかったようです。

 

※呪詛（じゅそ）

呪うこと。

 

また、今回の物は腕輪でしたが、

首輪など色々な形状があるようです。

 

しかし、呪いには必ず、

呪い返しが付きものです。

 

仕掛けられたかんひもに気がつくと、

 

それを掘り返して、

こちらの村に仕掛け返したそうです。

 

それを防ぐために生まれたのが、

道祖神の阿苦です。

 

村人は埋められたかんひもに気づくと、

その上に阿苦を置いて封じました。

 

阿苦は本来『架苦（かく）』と呼ばれており、

 

石碑に刻まれた人物に

『苦』を『架』すことにより、

 

村に再び災いが舞い戻ってくるのを

防ごうと考えたのではないでしょうか。

 

そして、その隣村への道が、

ちょうど裏山から続いていたそうです。

 

時の流れの中でかんひもは

穢（けが）れを失い、

 

徐々に風化していったようですが、

 

Kが見つけた例のかんひもは、

まだ効力の残っていたものなのでしょうか。

 

僕の調べた範囲で分かったのは、

このくらいです。

 

最後に･･･

 

婆ちゃんに気になっていたものの、

聞けなかったKのその後を訊きました。

 

Kは、あれから地元の大きな病院に

連れて行かれました。

 

坊様の力か、

その頃にはすでに髪は一本も残ってなく、

 

腕は刃物の切り口と、

 

中身がスカスカの皮だけに

なっていたそうです。

 

なんとか一命は取り留めたものの、

Kは一生寝たきりとなってしまっていました。

 

医者の話では、

 

脳に「髪の細さほどの無数の穴」が

開いていたと･･･

 

もし、かんひもを見つけられても、

決して身に着けたりなさいませんように。

 

（終）