3日間を祠の中で過ごすという祭り

田舎

 

俺の実家は東北の田舎にあり、数年に一度、村全体で『謝肉祭』が開かれる。

 

その祭りのしきたりが少し変わっていて、その年に7歳になる子供と16歳以上の未婚の女を別々の籠に入れて、普段は立ち入り禁止になっている山奥の祠に3日間閉じ込める。

 

しかも、選ばれる人間は必ず村の中で立場の弱い者が中心に選ばれている。

 

そして問題が起こったのは、3回前の祭りの時だった。

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約束を守らなかったから・・・

その時は祠に入る人はもう決まっていたが、なぜか村長の親戚の娘が「自分が入る」と言い出した。

 

この女性は7歳の時に祠に入れられた経験のある人。

 

本人がやりたいならやればいい、ということで決まりかけた。

 

だけど、今度は村長がOKを出さなかった。

 

この時はまだ、村での立場の弱い者を選ぶというルールはなかったが、おそらく自分の一族から出すのは格好悪いとかそういうことが理由なんだろうと思う。

 

しかし、その娘は「絶対に自分が入る」と言って聞かなかった。

 

それでも結局、村長が絶対にダメだということで、その娘は選ばれなかった。

 

これは後から聞いた話だが、この時に娘は「自分が入らないと大変なことになる」とか、「約束が・・・」と言って凄くもめたらしい。

 

当然ながら、何を言っているのか意味が分からないし、村長の意向で別の人が2人選ばれた。

 

その2人が祠に入って3日後、籠が祠から運び出されて開けられた。

 

その時に問題が起こった。

 

籠を開けて7歳の方の子は出て来たが、もう一人の方が出て来ない。

 

村人も段々と異変に気づいて、「何だ?!何だ?!」という感じになってきた。

 

籠の中を何人かで確認するが、中は空っぽ。

 

本来なら籠から出てきた人は大体ぐったりしていたり、ボーっとして意識朦朧としていることが多いのだが、この時の7歳の子はブルブル震えて怯えているようで、明らかに何かおかしかった。

 

村人何人かで祠の中を探したりしたが、籠に入っているはずの女性は何処にも見当たらなかった。

 

駐在さんにも来てもらい、翌朝に町から警察官が沢山来て捜索したけれど、やはり女性は見つからなかった。

 

最終的には『行方不明』ということになった。

 

後から村の人たちの間で噂になったことなんだけれど、7歳の子が警察官に色々と聞かれた時、しきりに「守らんかったから来た」と変なことを言っていたらしい。

 

その子も相当なショックを受けたのか、それをただ繰り返すだけで、何が来たのかは「ウルグル・・・」と変なことを言うだけで分からずじまいだった。

 

こういうことがあったから、当然祭りをどうするか話し合いがあったそうだが、ご先祖様たちがここに落ち着くと同時に始まった祭りなので、祭りそのものは存続することになった。

 

但し安全のため、祠に入る人の選定は、審査して問題の無い者を選ぶということに。

 

・・・が、それはあくまで表向きで、実際は何が起こってもいいようにと、立場の弱い者が中心に選ばれるということになった。

 

あの時の7歳の子は今でも村で生活しているらしいが、あまり普通に会話できるような感じではないそうだ。

 

村長の親戚の娘はこの事件の後、何ヵ月かして余所に出て行ったということだった。

 

村長はそれからしばらくして亡くなった。

 

当時でも、この事件について話さないようにという雰囲気が村にあったようで、真相を知りたくても村人たちはそれ以上踏み込めなかった。

 

(終)

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