俺はもうすぐ死ぬ人間です
俺はもうすぐ死ぬ人間です。
自殺するわけじゃありません。
医者の手に余る『大病』が判明しただけです。
俺の人生はろくでもなかった。
小学生くらいの頃までは神童でした。
※神童(しんどう)
特定分野において驚異的な能力を発揮する人物、特に少年時代に並外れて優秀であった者に対しての尊称。
けれど、あることをきっかけに、全てが上手くいかなくなりました。
なにより憎いのはこの頭
中学も高校も、ろくでもない生活を送り、大学も中退。
その後、仕事も出来ずに苦しんでいました。
なぜか病院には行かせてくれなかったので、10年近くこの状態でした。
3ヶ月程前にあることがきっかけでやっと病院へ。
その後、先生が青い顔をして紹介状をくれました。
紹介状を携えること4度くらいで、とても大きい病院へ。
俺は「最先端医療とか掛かる金は無いからやめる」と言いましたが、お金はいらないというので診てもらいました。
結果、前頭葉と左脳の表面の方はかなりダメージを受けていて、機能はおそらくあまりしていない、と。
この時の衝撃が原因と思われる病は他にもあり、この患部近くの血管にやたらと血栓が多く、いつ脳梗塞を起こしてもおかしくない状態だという。
俺の頭の中は、過去の小さい脳梗塞の痕跡がいくつもあるそうです。
医者は、「助けてあげることは出来ない」とはっきり言ってくれました。
手術なんてものに縋って生きるよりかは、人様に迷惑をかけない範囲でやりたいことをやり尽くして未練を残さないように、と。
俺は医者に訊いてみました。
「俺の脳の状態はひょっとして右のこめかみを強く打つような、そういう倒れ方をした時に起きるものですか?」、と。
覚えがあるのがその一回なら、間違いなくそれが原因だろうとの事。
俺は小学生の頃、担任の教師に宿題を忘れたことで黒板の前に立たされ、思い切り張り倒された上に、教卓に頭をぶつけて気絶したことがあります。
それ以来なんです。
俺が「まともでない」と半ば自覚しながら苦しんできたのは。
まさか、学校に行って生きながらに殺される羽目になるとは夢にも思いませんでした。
あの時に死んでいた方が、親にも迷惑が掛からなかったんじゃないかとさえ思います。
親族にだって俺が働けないでいることで、どれほどの迷惑を掛けたか・・・。
教師の立場を利用して、加虐趣味を満たしたあの鬼畜に法の裁きを。
時効が憎い。
なにより憎いのはこの頭。
今、体半分の感覚がありません。
(終)