しばらくは夢を見るのが怖かったワケ

布団

 

幼い頃に“不気味な夢”を見たことがある、と言う彼。

 

内容はこう。

 

いつも通り友達らと遊んでいると、遊び場の裏手の山から女が下りてきた。

 

女は友達らの内二人の手を掴むと、そのまま山へ連れ去ってしまう。

 

何故か皆逆らわず、黙って静かにそれを見送った。

 

しばらくすると、シャツを血で染めた友達が一人だけ帰ってきた。

 

耳が片方千切り取られて、そこから流れた血がシャツを濡らしていた。

 

そこで目が覚めた、そう彼は言う。

 

数日後、その裏山が一部崩落し、遊んでいた子供達が巻き込まれる事故が起きた。

 

運悪く土砂に埋もれたのは、彼が夢で見た二人だった。

 

大人たちに救助されたものの、一人は残念ながら亡くなった。

 

亡くなったのは、夢の中で山から帰って来なかったの方の友達。

 

もう一人は命こそ取り留めたが、片側の耳が聞こえなくなってしまった。

 

そんなことがあってから、しばらくは夢を見るのが怖かったそうだ。

 

(終)

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