私に取り憑く生霊

 

うちの祖母は

大変熱心な仏教徒で、

 

多額のお布施や

お墓の管理費なども厭わず、

 

平休日お構いなしで四国へ

お遍路の旅に出てしまうほど。

 

今日はそんな祖母にまつわる

お話をしたいと思います。

 

祖母は娘(私にとっては叔母)

早くに亡くしているせいか、

 

死後の世界や霊的なモノに

とても関心が深く、

 

小さい頃から見事なまでに、

 

よくないモノを憑けてきては

体調を崩していた私を、

 

何故か自慢に思っている

節があります。

 

私を宗教仲間の前に

引っ張り出して、

 

「この子には特別なチカラがある!」

 

と吹聴したり、

 

「ここには何か感じるか?」

 

とあちらこちらに連れ回すなど、

 

何かと困ったところのある

人なのでした。

 

私には確かに、

 

人外のモノが見えたり聞こえたり

感じたりすることがあります。

 

けれど自分では単に、

 

「合う波長の幅が人よりも少し広い」

 

だけだと思っているので、

 

チカラをコントロールすることなんて

出来ないし、

 

徐霊浄霊はおろか、

 

満足に意思を汲み取ることさえ

出来ません。

 

それを祖母が過大評価して

触れ回るものですから、

 

私はいつしか

祖母の信者仲間から、

 

色眼鏡で見られるように

なっていました。

 

会ったこともない人の口にさえ、

私の話題が上るくらいに。

 

その仲間内に、

Tさんという人がいます。

 

祖母と同年代で

姉弟子のような存在らしく、

 

いつも威張ったような

調子で会話をする、

 

印象の強い人でした。

 

彼女曰く、

 

自分は御仏の声が

聞こえるのだ、

 

だから私の言う通りしていれば

極楽に行ける、

 

・・・と。

 

胡散臭いなぁとは感じながら、

 

祖母の手前もあり、

口には出せない。

 

うちの母も祖母の影響を受けて

かなり信心深いタイプなので、

 

よくTさん主催のお遍路に

連れられていたのですが、

 

まだ出会っていない時期から、

 

私はTさんに目を付けられて

いたそうです。

 

「この子は将来大犯罪を犯す」

 

「地獄に落ちる」

 

「仏を冒涜しているから、

この子のせいで一族は栄えない」

 

などなど・・・。

 

さすがに祖母もそれを鵜呑みに

したりはしませんでしたが、

 

私から目を離すなと、

母に言い含めていたようです。

 

それからです。

 

Tさんの話題が家族間で出る度に、

 

左肩が重くなり、

体調が崩れるようになったのは・・・。

 

まるで憑かれた時のように、

 

細々とした病気にかかり、

体力が衰える。

 

もしかしたら生霊では?

とも思います。

 

何より恐ろしかったのは、

友人宅(お寺)に招かれた時。

 

さすがにお寺だけあって、

 

いつもはざわめくような沢山の人が

いるような気配がするのに、

 

私がそこへ入った途端、

波が引くように静かになったこと。

 

住職をされている

友人のお父さんに、

 

「生きている人の念の方が

何倍も強いからね。

 

しかも、容易くは祓えない。

 

でも、君は憑かれても、

 

ギリギリで踏み留まって守ってくれる

守護霊がついているから大丈夫。

 

相当手こずっているみたいだけど」

 

・・・と。

 

もう腹立たしくて、一度は

早くTさんが居なくなって欲しい、

 

なんて思っていたくらいです。

 

季節の変わり目・・・と思い、

なんとか自分を誤魔化していますが、

 

最近ひどくなった咳をする度に、

左肩が気になります。

 

振り返りませんけどね、

何かいたら怖いので・・・。

 

(終)

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