修学旅行で泊まったホテルにて

 

修学旅行の時の話。

 

私達はその日、

東北地方のT湖に来ていた。

 

湖畔の乙女の像を見たりして、

元気に歌いながら楽しんでいた。

 

かなり寒い中、

雨が降っていて風も強く、

 

ガイドさんも珍しいと言うほどの

荒れた天気だった。

 

雨の中、

 

学年全員で集合写真を撮ってから

ホテルに移動した。

 

途中、いやに暗くて鬱蒼とした

森を通ったのを覚えている。

 

ホテルに到着して部屋に着いたが、

誰も中に入らない。

 

部屋は薄暗く、

何となく空気が重かった。

 

しばらく経っても、

まだ誰も入ろうとしない。

 

それほどに不気味だった。

 

後ろにいた私は

仕方なく部屋に入り、

 

「空気悪いね~」

 

なんてちゃらけながら、

 

窓を開けようと

手前の障子を開けた。

 

目の前に広がるのは、

木、木、木・・・。

 

奥の方には湖が見えた。

 

しかし、

ぞくりとして動けなかった。

 

結局、

窓は開けれなかった。

 

その部屋には私を含め、

6人が泊まった。

 

私の他にもう一人、

見えると言う子がいた。

 

(その子をEとする)

 

Eも一瞬止まったが、

すぐに持ち直し、

 

「御札とか貼ってあったら

ウケるよね~」

 

なんて言い出した。

 

・・・ありましたよ。

 

お決まり通り、

掛け軸の裏とタンスの内側に。

 

他の4人はどん引きだった。

 

さすがの私達二人もびっくり。

 

まさか本当にあるとは

思っていなかった。

 

それでも馴れてきたせいか、

落ち着いてきた矢先、

 

他室の子が泣きながら

駆け込んできた。

 

その子というのが、

 

普段は泣いたりしない、

わりと強気な子。

 

悪系的な子だった。

 

その子が言うには、

とにかく怖い。

 

雰囲気がおかしい。

 

部屋に居られないとの事。

 

泣きながら真剣な顔で先生に

部屋を替えてと訴えていた。

 

(結局は替えてもらえなかった)

 

そんな事があったせいか、

 

イマイチ気分が盛り上がらず、

黙々と過ごしていた。

 

そして夜になった。

 

布団の位置はこんな感じ。

*******
┏──窓──┓
┃──障──┃
┃  〇  〇 ┃
┃  ◎  〇 ┃
┃  〇  ● ┃
┗扉━押入れ┛

*→木
障→障子
〇→友達
◎→E
●→私

 

夜更かしもしないで寝た

修学旅行の夜なんて、

 

初めてだったと思う。

 

そんな雰囲気じゃなかったし・・・。

 

就寝からしばらく経った

深夜の頃、

 

ぐっすり寝ていたのに

突然に目が覚めた。

 

なぜかはすぐに分かった。

 

皆、起きていた。

 

窓側の二人が、

怖い怖いって言っていた。

 

すると突然、

バンッ!って音がした。

 

どこからかは分からない。

 

でもその後、

 

色んなところから

パンッバンッパンパンッドン、

 

って聞こえてきた。

 

窓の方からだんだんと

内側でも鳴るようになって、

 

ついには部屋中から

聞こえるようになった。

 

もちろん障子の中からも

聞こえたけど、

 

そこまで怖くはなかった。

 

逆に、そんなに怖い?

って思った。

 

だから場所替えをした。

 

私が窓側の布団に

寝ることになった。

 

そしたらすごい怖いの。

 

窓に背を向けてたんだけど、

後ろからブワァって何かがくる感じ。

 

音は鳴り続いている。

 

そしたら友達の一人が、

障子を開けようって言うの。

 

冗談じゃないって思ったけど、

開けようとしたの。

 

すると、

 

キャーッ!って叫んで、

布団に潜り込むの。

 

どうしたの?って聞いたら、

その子が泣きながら、

 

「障子の向こうに誰か居た」

 

・・・って。

 

障子の向こう側から、

手がグゥーッとしていたって。

 

障子を押していたって。

 

部屋が騒がしくて

様子が変だと思ったのか、

 

先生が来た。

 

先生を見てありがたく思ったのも

初めてだった。

 

皆が半泣きで「助けて」って言った。

 

仕方ないって事で、

 

皆が落ち着くまで先生が

居るって事になった。

 

先生が居たお陰で落ち着いたのか、

皆は寝始めた。

 

私は寝れなかった。

 

まだ後ろからおかしな感じがしていたし、

何かの気配もあったから。

 

先生は10分ほどしたら

居なくなった。

 

私だけが起きていた。

 

そしたらまた鳴り始めたの。

パンッパンパンッって。

 

気配は近づいてきた。

もう駄目だって思った。

 

気付いたら朝だった。

 

気を失ったのか寝てしまったのかは

自分でもよく分からない。

 

だけど、ふと障子を見ると、

手形がうっすらと残っていた。

 

そして窓の外側には、

無数の手形が付いていた。

 

ホテルを出た後、

この話題でもちきりだった。

 

あの夜、

 

部屋の雰囲気が悪いと

怖がっていた人達は、

 

私達の他にも何組かあったらしい。

 

私達の部屋は5~6階だったはずで、

地面まではかなりの距離があった。

 

ハシゴも何もなかったので、

手形なんて付けようがないはずだった。

 

子供の小さな手形もあった。

 

一体、誰が付けたのだろう?

 

そして、あのホテルには

何があるのだろう?

 

そんなことがあったせいか、

それとも何か知っていたのか、

 

カメラマンさんはそのホテルで

一枚も写真を撮っていない。

 

何があったのか、

 

今の私には知る術もないし

知りたくもないが、

 

東北地方のT湖畔にある

ホテルに泊まる時は、

 

それなりの覚悟がいるのかも知れない・・・。

 

(終)

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