白いワンピースを着た女と姉貴

 

大学生の姉貴と一緒に見ようと、

日本のホラー映画を借りてきた。

 

映画を見終わった時に、

 

「日本人はね、女の幽霊を怖がるから、

邦画のホラーは女の霊が多いんだよ」

 

とネットで読んだ知識を聞かせたが、

姉貴は大して興味無さそうだった。

 

数日後、

俺が学校から帰ってくると、

 

リビングの窓から白いワンピースを着た

女の姿が見えた。

 

あれ？

姉貴帰ってるのか？

 

外からでは顔は見えなかったけど、

うちに若い女は姉貴だけだ。

 

家の中に入ってみると、

姉貴の靴は無い。

 

あれ？おかしいな･･･

 

リビングに行ってみても、

誰も居ない。

 

姉貴の部屋にも行ってみたが、

もぬけの殻。

 

家中を見てまわったが、

誰も居ないようだった。

 

う･･･ん、見間違いか？

 

俺は納得いかないまま、

自分の部屋に戻る。

 

学校の制服を脱いで、

クローゼット開ける。

 

その瞬間、

 

クローゼットの中から姉貴が

勢いよく飛び出してきた。

 

「ばあっ！！」

 

あまりにびっくりして、

心臓が止まるかと思った。

 

姉貴は勝ち誇った様に俺を見て、

 

「ねぇ、怖かった？

アハハハ～♪面白い～♪」

 

と言って大笑い。

 

この前の俺の話に触発されたんだな。

 

興味無さそうにしておいての、

不意打ちか。

 

「でも、なんで着替えたの？」

 

と俺が聞いてみても、

姉貴は着替えていないという。

 

今は白いワンピースではなく、

セーターとジーンズ姿なのだ。

 

何度聞いても、

着替えていないと言っている姉貴。

 

そんな姉貴は、

 

その年に交通事故で突然、

この世を去ったんだ･･･

 

クールだったけど、

いたずらをする茶目っけもある姉貴。

 

可愛い姉貴は、

もういないんだ。

 

でも、

 

姉貴は今でも俺たち家族のことを

見守ってくれているんだ。

 

直接現れることはないけど、

たまに家の中で後ろ姿だけ見かける。

 

あの時の白いワンピースを着て、

いつも家の中に居てくれるんだ。

 

（終）

解説

白いワンピースを着た若い女は、

姉貴が生きている時から見えていた。

 

つまり、

 

俺が今見ている白いワンピースの女は、

まったく知らない女である。