想像を絶するラブホテルでの体験 2/2

ラブホテル街

 

これ以上この部屋に居たら、

取り返しのつかないことになる。

 

そんな予感がした。

 

二人とも慌てて服を着て出ようとした。

 

だけど、

なかなか着ること出来ない。

 

ドラマや映画などで怯えた役者が、

ガタガタ震えているような状態。

 

あれは芝居であって、

現実ではほとんど無いことだ。

 

しかし、本当にあの感じ。

 

立てないぐらいに全身が震える。

 

実際、立てない。

 

決して大袈裟ではない。

 

手なんかは4~5センチぐらいの幅で、

ブルブル震えていた。

 

人間って、

まったく未知の世界に放り込まれたら、

 

好奇心もクソもない。

 

絶望に近い恐怖を感じる。

 

それだけだ。

 

二人とも違う方向を向いて

ガタガタ震えながら、

 

必死に服を着ようとしていた。

 

焦ったらダメなのは分かっていたが、

今にも背中の方で風船が爆発しそうだった。

 

適当に服を着て、

 

二人とも絶対に振り向かないように

エレベーターまで歩いた。

 

走らないように。

 

エレベーターに乗って、

壁の鏡に映る彼女に、

 

「なんやろ?これなんやろ?」

 

と言った。

 

彼女はずっと下を向いたまま、

 

首を横に何回も振りながら

ガタガタ震えていた。

 

俺も立ってられないぐらい、

全身が震えていた。

 

急いで車に乗って、

爆走でホテルから逃げた。

 

ここまで僅か10分足らずの出来事。

 

ホテルから出て、

彼女の家までの道中。

 

西淀川の福町、

たぶん今もそうだと思うけど、

 

街灯が無い上、

工場地帯で道が暗くてややこしい。

 

ハンドルを切ろうとした時、

なんとなく「ヤバイ!?」と思った。

 

同時に、

助手席に座る彼女が、

 

「あかん!!」

 

と叫んだ。

 

急ブレーキ!!

 

何か分からない・・・

 

でも、絶対そっちに行くのは

ダメなような気がした。

 

信じられないと思うけど、

 

彼女の家に着くまで、

二人とも全く同じ道のりを選んでいた。

 

普通だったら5分で着くのに、

かなり遠回りしないと帰れなかった。

 

絶対に行ったらダメな場所があった。

 

家に着いたら電話するからと言って、

彼女を車から降ろした。

 

ホテルからそれまで、

二人とも顔は見ていない。

 

ふとルームミラーを見たら、

 

車で帰る俺を、

ずっと心配そうに彼女が見ていた。

 

まだ、あの目だった・・・

 

怖くなって、

アクセルを思い切り踏み込んだ。

 

家に着いてから、

しばらく会うのをやめようと電話した。

 

次の日の朝、

鏡を見て、また震えた。

 

俺の目が・・・

彼女と同じ目だった。

 

あの目のままだった。

 

それから一週間、

鏡を見ることが出来なかった。

 

彼女も同じことを言っていた。

 

「ずっと他人の目だった・・・」

 

(終)

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