記憶が途絶えた空白の一年

つり革 電車

 

2001年の秋。

 

風邪をひいていて寒気がするので、

 

大久保にある病院へ行くために、

西武新宿線のつり革に掴まっていた。

 

頭ががグワングワンと痛く、

 

ずっと目を閉じて、

眉間にシワを寄せて耐えていた。

 

そこで記憶が途絶えた。

 

気がつけば夕方で、

辺りは見知らぬ景色。

 

買ったことのない服を着ていて、

 

髪を染めたこともなかったのに、

茶髪になっていた。

 

混乱しながらも近くのラーメン屋に入り、

ここはどこかと訊いた。

 

大阪市の福島駅の近くで、

さらに時間が一年近く過ぎていた。

 

携帯の機種も変わっていた。

 

アドレス帳には「ま」や「ひ」など、

 

ひらがな一文字での名前の電話番号が

10件程度あったけれど、

 

知り合いや実家の電話番号が無い。

 

俺はなぜだか分からないが、

 

その知らない電話番号が恐ろしくて、

携帯を川に捨てた。

 

その後、

警察から実家に連絡をした。

 

すると、

向こうも混乱していた。

 

俺に『捜索願』が出されていたからだ。

 

とにかく実家へ帰って、

今もまだ月に一度で精神科に通っている。

 

仕事は元の会社には戻れなかったので、

今は派遣をやっている。

 

(終)

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