やっと見つけた公衆電話にいた先客

公衆電話 ボックス

 

私はオカルト好きなのですが、

霊感などは全くと言っていいほどなく、

 

今からする話まで霊体験をしたことは

一切ありませんでした。

 

私が大学2回生の頃、

季節は10月でした。

 

夕方6時頃に大学の授業が終わり、

 

いつものように家まで1時間かけて

車を運転して帰ることにした。

 

そして、

いつものように帰る旨の報告と、

 

何か買い物するか訊くために

携帯を手に取ると、

 

2年ぐらい使っていた携帯だったので、

この時間ではもう電池が切れかかっていた。

 

電源を入れるとすぐにバッテリー切れの

表示が出てしまうので、

 

「しょうがない・・・

公衆電話から掛けるか」

 

と思い、

車を走らせた。

 

私が住んでいる地域はなかなかの田舎で、

 

大学までの道路沿いには田んぼがあるのは

当たり前という風景。

 

通い慣れた道でも、

 

いざ公衆電話を探してみると、

なかなか見つからないものだった。

 

そして20分ほど運転していると、

やっと見つかった。

 

その頃には日が早いせいか、

辺りはもう真っ暗だった。

 

見つけた公衆電話の場所というのは、

 

片側一車線の直線道路沿いの

街灯の下にあった。

 

近くには小さな売店があったが、

 

もう閉店したらしく、

シャッターが降りていた。

 

公衆電話が反対車線側に

位置していたので寄せようと思い、

 

右ウィンカーを出し、

ゆっくりと近づいていく。

 

すると、ボックスの中には、

 

長い黒髪で白シャツに黒のスカート

というスタイルの女性がいた。

 

当初、私は小雨の電話ボックスに

女性というシチュエーションに、

 

「うわっ、これもしかして・・・

貞子?(笑)

 

と思い、

引き続きゆっくりと近付き、

 

ボックスに並ぼうとするところまで

じっくり見ていた。

 

どうやら、

普通に電話を掛けている様子を見ると、

 

「なんだ、人間か・・・」

 

と内心ガックリ。

 

そして、

5メートルぐらい過ぎた所の、

 

ボックスとは反対側の路肩に

車を止めた。

 

車を止め、

振り返りボックスを見ると、

 

女性の顔は影になって、

顎のライン辺りしか見えなかった。

 

雨が降っているし、

 

ボックスに並ぶのも

お互い気まずいだろうから、

 

私は車の中で音楽でも聴きながら

待つことにした。

 

ちょいちょいオーディオを触りながら待ち、

ふと振り返ると女性の姿はもうなかった。

 

「あぁ、迎えでも呼んで、

反対の方向に歩いて行ったんだなぁ」

 

と思い、

 

私は雨もだいぶ小雨になっていたので、

歩いてボックスに向かうことにした。

 

ボックスに入ると中はムワッとしていて、

受話器も濡れていた。

 

「くっそー、雨嫌やなぁ」

 

と思いつつ、

 

ちょうどポケットティッシュを

持っていたので、

 

手早く受話器を拭いてジーパンのポケットに

ティッシュをしまおうとした。

 

その時だった・・・

 

自分の腕と脇腹の間から、

人の足が確認できた。

 

一瞬、ドキッとして振り返ると、

先程の女性だった。

 

うつむき加減な顔は、

相変わらず影になって見えない。

 

不思議に思いつつも、

 

軽く会釈をして電話を掛けようと

受話器を持ち直した時、

 

女性がいきなりドアの取っ手に

手を掛けて開けようとした。

 

私はとっさに、

 

折り畳み式仕様になっているドアを、

内側から太ももと左肘で押さえ付けた。

 

「なんやねん、コイツ!」

 

と思ったが、

絶句して言葉は発せなかった。

 

女性は、右手で一定の強さで

引っ張っている。

 

しばらくそんな格闘をしていたが、

 

ふいに女性はスッと手を離し、

スーと私の車の方に近付いていった。

 

その様子は、

 

オカルト好きの私がよく耳にしていた、

幽霊の移動する様そのものでした。

 

もう私はブルブル震え、

 

「ヤバい、車に・・・」

 

と思う間もなく、

 

女は車の向こう側の影の方へ

消えていった。

 

どうしようか5分ほど思案していたが、

 

いつまでもボックスに居るわけにもいかず、

嫌々ながら出ることにした。

 

恐る恐る車に近付き、

横目で車中を見るが、

 

人の形はなかった。

 

運転席側のドアを開け、

改めて中を確認してみても、

 

女はいなかった。

 

「消えてくれたのかぁ」

 

と安心したが、

 

車の中は電話ボックスのような

ムワッとした嫌な空気だった。

 

電話する事を諦め、

 

一刻も早く帰るため、

車を飛ばした。

 

走り始めてすぐに、

後ろの座席に気配を感じた。

 

湿気混じりの生温かい気配だ。

 

私は、「ミラーは絶対見ない、

見たくない」と決め、

 

周りを視界に入れないよう、

自分の前だけ見て運転し続けた。

 

すると、

今度は助手席に気配を感じた。

 

あの女がいる・・・

 

こちらを見ている・・・

 

黒い影だったけれど、

はっきりと目の端に映った。

 

私は状況に耐えかねて、

 

素早くルームライトを点け、

助手席を見た。

 

しかし、

 

ライトを点けようと腕を伸ばした

一瞬の間に、

 

女の影は消えていた。

 

その後、気配は消えたが、

 

私はライトを点けっ放しで

家路についた。

 

後日この話を、

 

同じ大学に通い、

同じ道を通っているであろう、

 

高校からの友人に話してみると、

その友人はサークルをやっているせいで、

 

夜8~9時にその道を通るのは

ザラみたいだった。

 

しかし、その友人は、

 

「いつも早く帰りたい一心だから、

わからない」

 

と言った。

 

そういえば私もあの時以外に、

 

あの電話ボックスを注意して見ることは

なかった事に気が付いた。

 

そして、

 

「何か、あそこであったんじゃないか?」

 

とオカルト魂に火がついて、

考え調べることにした。

 

ローカル新聞によると、

そこでは放置車両がごく稀にあり、

 

それと同時にその辺りに失踪者や

行方不明者が発生していた。

 

そして私の通う大学にも、

 

そのような貼り紙がしてあることに

初めて気付くことになった。

 

しかし、肝心のあの女のような人は

その中に見当たらなかった。

 

そして、この女の身元は

未だ分からない事から、

 

この女が元凶であると推測される。

 

もしかしたら私も失踪者に

なっていたかも知れないと思うと、

 

洒落にならないくらい怖い体験だった。

 

(終)

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