夏休みの住み込みバイト先の宿にて 1/2

ペンション

 

大学時代にサークルの先輩から聞いた、

当時高校生だった先輩の友達が体験した話です。

 

先輩は高校時代は部活には入っておらず、

 

同好会として放課後に十数人で

サークルのような活動をしていました。

 

同好会という名の通り、

 

部活ではないので部費というものが

割り当てられるはずもなく・・・

 

部長もしくはそれに近い立場の者が、

毎年の夏休みに形だけの言わば、

 

顧問の先生の知り合いがやっているペンションで

2週間ほど住み込みでバイトをし、

 

同好会の部費に当たるお金を稼ぎます。

 

これは、代々受け継がれてきた、

しきたりのようなものでした。

 

先輩が3年生になった時、

その友達が部長になり、

 

部長の彼(Bさん)が夏休みにペンションへ

バイトに行く事になったそうです。

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ペンションの忌まわしき過去の秘密とは・・・

ペンションに着いたBさんは早速、

 

顧問の先生の知り合いのペンションオーナーと

面通しすると、

 

施設の部屋数や仕事の内容などの

説明を受けました。

 

長期休暇ということで、

 

ペンションにとっては稼ぎ時なだけに

仕事量の多さに絶句しながらも、

 

ペンションの見取り図を片手に

中を案内してもらいました。

 

すると、

ふと疑問に思うことに遭遇しました。

 

書き入れ時で満室が続いているにもかかわらず、

 

2階の『2-2号室』の扉には、

“使用厳禁”と書かれた張り紙がされていて、

 

その部屋だけは使われていないようでした。

 

その件に関してオーナーに尋ねると、

 

「ああ、ここはエアコンが故障しててね。

去年から使ってないんだよ」

 

と一言。

 

・・・去年までは?とさらに疑問に感じ、

詳しく訊き返すと、

 

「・・・いや、ちょっとな・・・」

 

と怪訝な表情でオーナーは言いました。

 

ちょうど休憩時間になり、

 

Bさんは他の従業員の人たちにも、

この事に関して問いただしてみることにしました。

 

「ここってもしかして幽霊が出る

開かずの間ですか?」

 

とBさんが尋ねると、

 

それまでワイワイと談笑していた

従業員たちの顔が一気に曇り、

 

場が沈黙してしまいました。

 

「もしかしてヤバイこと訊いちゃいましたか?」

 

とBさんは言うと、

 

Bさんの隣に座っていた男の従業員が

おもむろに口を開きました。

 

「実は、そうなんだよね・・・」

 

その従業員の話によると、

 

ちょうど去年の今頃までは、

その部屋は普通に使われていたそうです。

 

このペンションは予約制なんですが、

ちょうど去年の今頃、

 

旅行系雑誌のフリーライターの女性が

アポ無しでペンションにやって来たそうです。

 

本来なら予約していない客は

泊めない事にしていたオーナーでしたが、

 

このお客に関しては、

 

旅行系雑誌のフリーライターという事で、

もしかしたら宣伝になると思い、

 

ちょうど空いていた2階の2-2号室に

泊まってもらう事にしたのでした。

 

料理にもいつも以上に手をかけ、

いざ食事の時間に。

 

2-2号室の女性客を呼びに行った

オーナーの奥さんは、

 

とんでもないものを見てしまいました。

 

浴室のドアノブに紐をくくり付けて

首を吊っている女性の死体でした。

 

部屋の中には遺書があり、

 

プロポーズをしてもらった男性に裏切られ、

悩んだ末の自殺という事でした。

 

それ以降、この部屋に泊まった客からは、

 

エアコンやテレビがいきなり止まったり、

勝手についたり、

 

夜に風呂場から女性の泣くような声が聞こえたり、

風呂場のドアが勝手に開いたりというように、

 

怪奇現象のようなものが起こるとのクレームが

多々ありました。

 

なので、事件後まもなく封鎖して、

去年から開かずの間としているそうです。

 

Bさんは霊現象やその類については

一切信じない人でした。

 

その話を聞いたBさんは、

 

「バイトの2週間の期間、

その部屋に自分を泊まらせて」

 

とオーナーに申し出ました。

 

予定では従業員専用の相部屋に

2週間泊まるはずだったので、

 

本来なら一般客に開放する部屋だけに

従業員部屋とは雲泥の差なうえ、

 

自分がそこに泊まって何も起きなければ、

 

これから普通にこの部屋を貸し出して、

売り上げにも貢献出来ると説得したのでした。

 

オーナーは渋りながらも、

 

去年から一年ほど経っているし、

とりあえずOKを出す事にしました。

 

Bさんは大喜びで2-2号室に

荷物を移動しました。

 

しかし、それを怪訝な表情で見る、

オーナーの杞憂も無駄に終わりました。

 

※杞憂(きゆう)

心配する必要のないことをあれこれ心配すること。取り越し苦労。

 

Bさんはバイト期間の2週間を、

何事も無く過ごしてしまったのでした。

 

そう、2週間までは・・・

 

(続く)夏休みの住み込みバイト先の宿にて 2/2

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