深夜3時、外から近づいてくる女

電柱

 

それは去年の出来事。

 

俺の住んでいるアパートは

県道に面した場所に建っていて、

 

2階にある俺の部屋の窓からは、

その県道が直下に見える。

 

夜中はほとんど人通りもないその道には、

 

小さな街灯付きの古い電柱が

部屋の窓の真ん前に建っている。

 

夜はその街灯の周り以外、

辺りは真っ暗になる。

 

ある平日の小雨がパラつく深夜3時頃、

 

一人暮らしの俺はその窓のある部屋で

テレビをぼーっと見ていた。

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今でも本当にどうしようもなく怖い・・・

俺はタバコをかなり吸うので、

いつもその窓を開けっ放しにしていた。

 

外からの音などはいつもよく聞こえるのだが、

さすがにこの時間にもなれば何の物音もしない。

 

しばらくテレビを見ていると、

外から『ギシギシ』という音が聞こえてきた。

 

俺は大して気にもせず、

そのままテレビを見ていた。

 

だがしばらくすると、

またあの音が聞こえてきた。

 

何だろう・・・と思い、

 

座っていた位置から膝立ての姿勢で

窓の外を覗いてみた。

 

すると、何か大きなものが

電柱の辺りで動いているようだった。

 

よく見えなかったので、

窓際までいって眺めてみた。

 

そしてよく見てみると、

誰かが電柱によじ登っているではないか!

 

(こんな真夜中に何やってるんだ?)

 

俺はそう思ったが、

なんだか急に怖くなったので、

 

別の部屋に行ってその部屋の電気を消し、

こっそり様子を眺めた。

 

電柱に登っているその人物は

頭巾のようなものを頭に被っており、

 

下にはもんぺをはいた女のように見えた。

 

もんぺ(wikipedia)

 

だが、顔はよく見えない。

 

まるで戦時中のような格好をしたその女が、

ゆっくりと電柱を登っていた。

 

俺はその光景に恐怖を感じたが、

そのままの姿勢で見続けた。

 

やがてその女は電柱のてっぺん近くまで登ると、

しばらく動かなくなった。

 

2~3分ぐらいだったか・・・

そのままの姿勢でいたその女は、

 

俺がさっきまでいた部屋の窓の

高さほどの位置におり、

 

部屋の方を凝視しているように見えた。

 

(やばい!!窓開けっ放しだった!)

 

俺は直感的にそう思ったが、

その部屋に戻る勇気はなかった。

 

再び女の方に目をやると、

いつのまにか姿が消えていた。

 

俺は訳が分からなくなり、

 

さらに恐ろしくなってきたので

元に居た部屋には戻れず、

 

別の部屋で布団にくるまって

朝を待つ事にした。

 

1時間ぐらい経った頃・・・

俺は怖くてなかなか寝つけずにいると、

 

部屋のドアノブが『カチャカチャ』

微かに音がしている事に気付いた。

 

(もう、何なんだよ・・・)

 

次第にドアノブがゆっくりと回り、

扉が少しずつ開き始める。

 

俺は情けないことに悲鳴を上げ、

布団を被って震えていた。

 

すると、

誰かが部屋に入ってくる気配がした。

 

布団の僅かな隙間からは、

人間の足のようなものが見えた。

 

もんぺ地のズボンだった。

 

(さっきの女だ!)

 

正直、失禁しそうだった。

 

目を閉じてしばらく震えていた俺は、

 

ふと目を開けると・・・

布団の隙間から女がこちらを覗いていた。

 

俺はここで完全に気を失い、

気付くと朝になっていた。

 

ただ、その時に見た女の顔は、

3歳ぐらいの子供の顔だったように見えた。

 

今はもうそのアパートに住んでいないが、

夜は未だに怖くて電気を点けたまま寝ている。

 

夜中にトイレへ行くのも怖い。

 

あの顔と格好が頭に焼き付いてしまって、

本当にどうしようもなく怖い。

 

(終)

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