コックリさんは終わっていなかった

こっくりさん

 

俺の女友達に、いわゆる「見える」奴がいる。

 

大学の新入生歓迎会で知り合った奴なのだが、外見は至って普通。

 

でも、勘の良さというのか、第六感が半端じゃない。

 

知らない道に迷い込んだ時、いきなり立ち止まって「この近くで猫が死んでるね」と、さらっと言い出す。

 

面白がって辺りを探してみたら、自販機の裏についさっき轢かれたような猫の死体が隠すように押し込められていた、なんてこともあった。

 

「いつから見えるんだ?やっぱりキッカケとかあるのか?」

 

ある日、喫茶店で話していた時に、冗談半分で彼女に訊いてみたことがある。

 

初めはお茶を濁そうとしていたが、俺があまりにしつこいせいか、結局折れて話してくれた。

 

「後悔しないでね」、と前置きを入れて。

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以下、彼女の話

私が小学校3年の時にね、クラスでコックリさんが流行ったの。

 

私は当時はまだ「見えなかった」から、そういうのを信じていなくてね。

 

でも、私のクラスにコックリさんに夢中になっているグループがいたんだ。

 

霊感があるって子が中心のそのグループは、なんかある度に「コックリさんが当たった」だの、「コックリさんが言う通りの事が起こった」だの言ってたのよ。

 

私、正直嫌いだった、その子。

 

それである時、私とその自称霊感少女が喧嘩になってね、コックリさんの事で。

 

「いる」、「いない」の水掛け論だったんだけど、「証拠を見せてやる」なんて言うから私もつい乗っちゃったのよ。

 

まぁ、本当かどうか興味はあったし。

 

その霊感少女グループと私の合計4人で、コックリさんをやることにしたわけ。

 

放課後になるのを待って、私たちは屋上に向かう踊り場に行ったの。

 

なんでも、そこが校舎の中で一番いい「ポイント」らしくてね。

 

バカバカしいと思いながらも、コックリさんの準備を手伝ったわよ。

 

使われていない机を並べたりしてね。

 

それでいよいよ始まった。

 

何回か「コックリさん、コックリさん、おいでください」って呼びかけているうちに、10円玉がすぅっと『はい』に動いたの。

 

他の皆はコックリさんが来たって騒いでいた。

 

その様子を見ていたらなんか馬鹿らしくなって、私はふざけて「コックリさん、コックリさん、お願いですから私たちに幽霊を見せてくださぁ~い」って言ったの。

 

10円玉は『はい』に動いた。

 

すると、みんな慌てて逃げて行った。

 

コックリさんは今でも続いていた

「・・・それだけ?」

 

拍子抜けした。

 

確かにドアを叩かれるシーンでの大声には驚いたが、それはあくまで”驚き”だ。

 

恐怖とは違う。

 

話自体も中途半端のままだ。

 

「その話、なんか続きないのか?どうも中途半端だ。オチが弱い」

 

正直に聞いた。

 

元々遠慮するような間柄じゃない。

 

「人がせっかく話したってのに、そんな酷評をしやがりますか、貴様は・・・」

 

そう言いながらも、彼女はニヤニヤしている。

 

どうやら、まだオチは先らしい。

 

「次の日にその場所へ行ってみたら、コックリさんのセットは無かったの。きっと、見つけた先生が片付けたんじゃないかな」

 

「でもね、コックリさんのルール、最後は呼び出したものを鳥居を通して帰さなきゃならないじゃない。私達はそれをやっていない

 

「だから、あの時のコックリさんはまだ続いているのよ」

 

ゾクッとした。

 

10年以上も続いているコックリさん。

 

呼び出されたモノは何処へ行ったのか。

 

「だったらさ、その時のメンバー集めてまたコックリさんやればいいんじゃないか?それで帰ってもらえば万事解決だろ?」

 

それは無理、と彼女は言った。そして・・・

 

「だって、私以外もう死んじゃってるんだもん」

 

絶句した。

 

固まっている俺を気にもせず、彼女は続けた。

 

「死に方は事故だったり自殺だったり色々だけどね。結局、一番最初に指を離した私だけが今のところは無事なの」

 

「さて、私はそろそろ行くけど、嫌な話させたんだからここ奢りなさい。じゃ、またね」

 

俺は何も言えなかった。

 

自分のせいで死んだかも知れないクラスメート。

 

思い出したくもないだろう話を、俺は彼女にせがんだ。

 

激しく後悔していた。

 

一言謝ろう。

 

そう思って顔を上げると、彼女と視線がぶつかった。

 

店を出る準備をしていた手を止めて、彼女は俺を見ていた。

 

「するなって言ったのに、後悔してるみたいね」

 

頷く。

 

すまん、と言う前に彼女が続けた。

 

「じゃあ、後悔ついでにもう一つ。私ね、小学校までは垂れ目だったのよ」

 

自分の目を指差して、彼女は笑っていた。

 

呆気に取られて固まっていると、彼女は軽い調子で「そんじゃね!」と店を出て行った。

 

10年以上も続いているコックリさん。

 

呼び出されたモノは”目の前”に居たのだろうか。

 

彼女は吊り目だ。

 

(終)

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