幽霊が出ると噂の山道にて

山道

 

俺と友人の二人が、「心霊スポットには二度と行かない」と決意した話。

 

それは俺が大学生の頃、当時の俺は心霊スポットを巡るのが好きで、友人の哲也(仮名)と色々な場所へ行っていた。

 

だが、相当な数の場所へ行ったけれど、ただの一度も幽霊は見なかった。

 

次第に俺たちも慣れてきて、「幽霊に会いてぇ」と、ふざけたことをよく言い合っていた。

 

心霊スポットで夜を明かすのも、心霊スポットで二人でこっくりさんをしても怖く感じることは無くなっていた。

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やつらは何者だったのか?

その日も俺と哲也は、「幽霊が出る」と噂の山道を深夜に二人で歩いていた。

 

車を下に停めて、二人で山道をずんずん上っていった。

 

でも、何も出ない。

 

とりあえず足を止めて幽霊を待つも、やっぱり出ない。

 

二人して「またハズレか~」なんて笑った。

 

そして、今度は山道を下っていった。

 

駐車場の所まで戻って休憩していると、7人ほどの大勢が山を登って来るのが遠くから見えた。

 

暗かったので男か女かはよく分からなかったが、全員が白っぽい服を着ていたのは分かった。

 

でも、何かおかしい・・・。

 

まず、歩き方が変だった。

 

7人全員が縦一列に並んで歩いている。

 

まるで軍隊の行進のように等間隔で。

 

それ以上にもっとおかしかったのが、全員が懐中電灯を持ち、先頭の人間以外は前の人の背中に光を当てる感じで歩いている。

 

哲也もそのおかしさに気づき、面白そうだったので後ろからこっそり付いて行くことにした。

 

俺も哲也も不気味にも思っていたけれど、それ以上にワクワクしていた。

 

「あれってマジもんじゃねぇか?」と、二人でドキドキしながら。

 

その集団の懐中電灯の明かりを頼りに、かなり後ろの方から付いていった。

 

もちろん俺たちの懐中電灯は消していた。

 

道路は舗装されていたし、月明かりも結構あったので、真っ暗ってわけじゃなかったからなんとか付いていけた。

 

集団は後ろを振り返るでもなく、ただ黙々と一列で歩いている。

 

途中、お互いに会話している様子も無かった。

 

どんどん上って行ってると、突然その集団が止まった。

 

それはもう、計算されたかのようにピタリと。

 

俺たちは「バレたか!?」と焦ったけれど、とりあえず後退して脇の草むらに隠れた。

 

すると、集団の先頭の人がゆっくりと一番後ろの人に向かって歩き出した。

 

そして、ちょうど『円陣』を組む形になった。

 

相変わらず暗くて顔はよく分からなかったけれど、その集団は全員が円の中央を向いて何かをしていた。

 

俺と哲也は「何やってんだ、あいつら(笑)」と、まだこの時は楽観視していた。

 

かなり長い時間が経ったが、耳を澄ましているとその集団の方から何か聞こえてきた。

 

よく聞き耳を立てると、明らかに人の声で「ア゛ア゛ア゛ア゛・・・」と低く呻っているのが分かった。

 

今でもはっきりと覚えているけれど、その声を聞いた瞬間、これはヤバイと一瞬で思った。

 

哲也も同じだったらしく、さっきまでのヘラヘラした顔とは打って変わって強張っていた。

 

哲也が一言だけ「戻るぞ・・・」と搾り出すように言うと、俺もただただ頷いた。

 

二人でゆっくりと音を立てないように後ろを向いて山を下っていった。

 

後ろには光がまだあった様なので、まだ何かしているのだろうと思っていたが、結構離れた時にふと後ろを振り向くと、奴らの懐中電灯の光が突然全部消えた。

 

俺と哲也は一瞬固まったけれど、すぐに全速力で走り出した。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛・・・」という声が、ゆっくりと近づいていた。

 

俺たちはもう、死ぬ気で駐車場まで走っていった。

 

その間もどんどん後ろから「ア゛ア゛ア゛ア゛・・・」という声が近づいて来る。

 

とてもじゃないけれど、後ろを振り向いている余裕は無かった。

 

駐車場に着くと急いで車に乗り、エンジンをかけて素早く駐車場から出ていった。

 

車の中に逃げ込んだ時から正直半分錯乱していてよく覚えていないが、駐車場から出て行く時にチラッとあの集団が見えた。

 

やつらは駐車場の近くまで来ていた。

 

近くの街灯に照らされて、初めてやつらの顔を見た。

 

錯乱していて薄暗い中だったから見間違いかも知れないが、やつらは顔が無かった。

 

顔の部分にぽっかりと穴が空いていた。

 

それから家に帰った俺と哲也は、お互いその話は一切しなかった。

 

帰りの車の中でも、お互いずっと無言だった。

 

それ以降、哲也とオカルト系の話をすることは無くなったし、自然と疎遠になっていった。

 

俺も哲也も、二度と心霊スポットに行くことは無いだろうと思う。

 

結局、あいつらが何なのかは分からなかった。

 

化け物かも知れないし、幽霊だったかも知れない。

 

(終)

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