子供が滅多に来ない公園で出会った女の子

砂遊び

 

この話は、俺の体験談だ。

 

幼稚園に入る前、いわゆる公営団地に住んでいた。

 

団地の近くにはいくつか公園があり、団地住民の子供はよくそこで遊んでいた。

 

俺もその一人。

 

俺は一番端にある公園が好きで、よくそこに行ったものだ。

 

水飲み場と砂場とベンチしかないので、子供は滅多に来ない。

 

だから俺は好きだった。

 

霊感を持っているが故に、周りからは薄気味悪がられていたのだ。

 

「あそこに●●がいる」

 

そう指差した方向に何も見えなければ、近寄りたくなくなるのは当然のことだ。

 

自然と俺は一人で遊ぶようになっていった。

 

この公園で俺のお気に入りといえば砂場だった。

 

砂を盛って山を作り、底を掘ってトンネルを作る。

 

そのあとは赤いミニバケツに水を入れ、トンネルに流し込む。

 

こんなことを毎日飽きもせずにやっていた。

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どうりで俺は大事にされていたわけだ

ある日、いつものように公園へ行くと、見たことのない女の子がベンチに腰掛けていた。

 

とても可愛らしい。

 

どことなく自分に似ているのは気のせいだろうか。

 

周りを見ても親らしき人はいない。

 

・・・ということは、団地の子だろう。

 

「お名前なんてゆーの?」

 

「カナ」

 

「一緒に遊ぶ?」

 

「うん」

 

こんな会話だったと思う。

 

俺たちは色んな話をしながらトンネルを掘って遊んだが、残念なことに会話の内容までは思い出せない。

 

そうこうしているうちに辺りは暗くなり始め、夕日が沈みかけていた。

 

「もう帰らなきゃ。お母さんに怒られる」

 

「カナは・・・もうちょっといる」

 

「団地に住んでるの?」

 

「うん」

 

「じゃあこれ貸してあげるよ。明日また来るから返して」

 

「わかった」

 

俺は黄色の柄が付いた緑色のシャベルと赤いバケツを貸してあげた。

 

団地に帰ると、母に友達が出来たことを報告した。

 

「あら、良かったわね。どこの子?」

 

「うーん、わかんない。だけど団地に住んでてカナちゃんって言うんだって」

 

「ふーん。また遊べるといいね」

 

翌日、昼頃に公園に行くと、カナちゃんはベンチに座っていた。

 

「こんにちは」と互いに挨拶を交わし、また砂遊び。

 

遊びの時間は不思議である。

 

あっという間に過ぎてしまう。

 

夕方になった時、買い物から帰宅する母を見かけた。

 

この公園の先には商店街に続く道があるのだ。

 

「お母さーん」

 

俺は母に駆け寄り、今までにない巨大富士山とタワーにトンネルを織り交ぜた海上都市を見せたかった。

 

「あら、神楽。今日はカナちゃんとは遊んでないの?」

 

「え?カナちゃんと遊んでるよ。今までずっと一緒に作って・・・」

 

振り返ると、カナちゃんはいなかった。

 

「あれ?おかしいな。カナちゃん帰っちゃったのかな・・・。隠れているのかも!」

 

茂みを探してみたが、見当たらない。

 

「・・・もう遅いから帰りましょ、神楽。夜ご飯のお手伝いして」

 

「えーやだー」

 

その日の夜、俺は原因不明の高熱にうなされた。

 

40度を超えていたらしい。

 

うなされながら、「カナちゃん・・・カナちゃん・・・」と名前を呼び続け苦しむ俺。

 

そんな時、父と母は俺の身体の上に白い球体が浮かんでいたのが見えたらしい。

 

父と母は必死に叫んでいた。

 

「香奈のこと忘れたことなんて一度もない!頼む!神楽だけは・・・」

 

「神楽を連れて行かないで!お願い!」

 

どうやら俺には姉がいたらしいのだ。

 

両親にとって初めての子供で、女の子が生まれると分かってから、既に『香奈』と名前をつけてお腹に呼びかけていたそうだ。

 

いよいよ出産となった時、姉は死産だったらしい。

 

しばらくは母がとても落ち込んでしまい、今のように明るい性格が不思議と思えるくらいだが、なんとか元気を取り戻した時に俺が生まれた。

 

どうりで俺は大事にされていた感があるな、と感じた。

 

次の日の夕飯、俺は食欲も出てきてカレーを食べていた。

 

「カナちゃん、夢の中で言ってたよ。『お母さん、お父さん、生んでくれてありがとう』って。『またお母さんとお父さんの子供になりたい』だって」

 

それを聞いた母は、声を出して泣き出した。

 

「ありがとう」、「ごめんね」を繰り返して・・・。

 

父は涙を流しながら、しかし、ぐっと堪えるように無言でカレーを食べ続けていた。

 

後日談

大人になってから母に聞いた事だが、熱が下がった日は姉の誕生日かつ命日だったそうだ。

 

どうやら俺は姉に助けられたらしい。

 

確かに怖い感覚は無かった記憶がある。

 

そして翌年、妹が生まれた。

 

どことなくカナちゃんに似ているのは気のせいだろうか。

 

笑った顔がそっくりだ。

 

(終)

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2 Responses to “子供が滅多に来ない公園で出会った女の子”

  1. 774x より:

    ええ話や。

  2. 匿名 より:

    世界が泣いた

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