壁に落書きされたQRコードにアクセスすると
2年ほど前の話になる。
近所のブロック塀に、変わったモザイク模様の落書きが散見されることがあった。
おそらく、紙を切り抜いて上からスプレーを吹いて壁に転写したのだろう。
そういった手口で量産される、缶コーヒーのBOSSの顔や阿部さんの落書きなどをニュースで見たこともある。
その落書きは、遠目から見ると黒いシミなのだが、近くで見るといかにも・・・的な感じ。
スマホのアプリに読み込んでみたら、やはり『QRコード』だった。
俺の横で壁を指差している奴
早速、QRコードからURLに繋いでみると、それは解像度の小さい動画で、それぞれの落書きの場所の夜の風景を撮ったものだった。
動画時間は30秒くらい。
ちなみにURLを見る限りでは、どの動画の置き場も懐かしいことにTripod(フリーウェブサービス)だった。
全く意図不明で、特に事件性も無いようなので放置した。(落書きは軽犯罪だが)
そんな落書き巡りをしてから一週間後くらいに、自宅脇の電柱にも同じ落書きがされていたのにはちょっと寒気がした。
たまたまだと自分に言い聞かせながらQRコードを開いたら、それは昼間に撮られた明るい映像で、また今回は初めて人間が映っていた。
動画はコロコロと場面を切り替えていたが似たような内容で、毎場面様々な人が皆一様に壁に向かって携帯を弄っているシーンだった。
ただ、どのシーンでも壁を指差している同一人物がいて、その横でもう一人が携帯を弄っているという感じだ。
そして、その携帯を弄っている人間の中には俺もいた。
壁を指差している奴が俺のすぐ横にいたのだ。
きっとそいつが仕掛け人なのだろうが、落書き巡りをしている時の俺は、もちろんこんな奴は見ていない。
さすがに気味が悪かったので、しばらく戸締りには気を付けた。
幸いにも、今のところは俺の身に何も起きていない。
(終)