姦姦唾螺 3/7

オレ「お前の親父が言ってたの、

たぶんこれの事だろ」

 

A「暴れるとか無理。明らかにやばいだろ」

 

だが、Bは強気な姿勢を崩さなかった。

 

B「別に悪いもんとは限らねえだろ。

とりあえず、あの箱見て見ようぜ!

宝でも入ってっかもな」

 

Bは縄をくぐって六角形の中に入り、

箱に近づいてった。

 

オレとAは、箱よりもBが何をしでかすかが

不安だったが、とりあえずBに続いた。

 

野晒しで雨とかにやられたせいか、

箱はサビだらけだった。

 

上部は蓋になってて、

網目で中が見える。

 

だが、蓋の下にまた板が敷かれていて、

結局見れない。

 

さらに、箱にはチョークか何かで

凄いのが書いてあった。

 

たぶん家紋?的な意味合いのものだと

思うんだが、前後左右それぞれの面に、

いくつも紋所みたいなのが書き込まれてて、

しかも全部違うやつ。

 

ダブってるのは一個もなかった。

 

オレとAは極力触らないようにし、

構わず触るBにも、乱暴にはしないよう

注意させながら箱を調べてみた。

 

どうやら、地面に底を

直接固定してあるらしく、

大して重さは感じないのに、

持ち上がらなかった。

 

中身をどうやって見るのかと

隅々までチェックすると、後ろの面だけ

外れるようになってるのに気付いた。

 

B「おっ、ここだけ外れるぞ!

中見れるぜ!」

 

Bが箱の一面を取り外し、オレとAも

Bの後ろから中を覗き込んだ。

 

箱の中には、四隅にペットボトルのような

形の壺が置かれてて、その中には

何か液体が入ってた。

 

箱の中央に、先端が赤く塗られた

五センチぐらいの楊枝みたいなのが、

変な形で置かれてた。

 

/\/\>

 

こんな形で六本。

接する四ヶ所だけ赤く塗られてる。

 

オレ「なんだこれ?爪楊枝か?」

 

A「おい、ペットボトルみてえなの

中に何か入ってるぜ。気持ちわりいな」

 

B「ここまで来てペットボトルと

爪楊枝かよ。意味わかんねえ」

 

オレとAは、ぺットボトルみたいな壺を

少し触ってみたぐらいだったが、

Bは手に取って匂いを嗅いだりした。

 

元に戻すと、今度は/\/\>を触ろうと、

手を伸ばす。 

 

ところが、汗をかいていたのか

指先に一瞬くっ付き、そのせいで

離すときに形がずれてしまった。

 

その一瞬、

 

チリンチリリン!!チリンチリン!!

 

オレ達が来た方とは反対、

六角形地点のさらに奧に、

うっすらと見えている柵の方から、

物凄い勢いで鈴の音が鳴った。

 

さすがに三人とも、

「うわっ」と声を上げてビビり、

一斉に顔を見合わせた。

 

B「誰だ、ちくしょう!

ふざけんなよ!」

 

Bは、その方向へ走りだした。

 

オレ「バカ、そっち行くな!」

 

A「おいB!やばいって!」

 

慌てて後を追おうと身構えると、

Bは突然立ち止まり、

前方に懐中電灯を向けたまま、

動かなくなった。

 

「何だよ、フリかよ?」と、

オレとAがホッとして急いで近付いてくと、

Bの体が小刻みに震えだした。

 

「お、おい、どうした・・・?」

 

と言いながら、

無意識に照らされた先を見た。

 

Bの懐中電灯は、立ち並ぶ木々の中の一本、

その根元の辺りを照らしていた。

 

その陰から、

女の顔がこちらを覗いていた。

 

ひょこっと顔半分だけ出して、

眩しがる様子もなく、

オレ達を眺めていた。

 

上下の歯をむき出しにするように、

い~っと口を開け、目は据わっていた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

誰のものかわからない悲鳴と同時に、

オレ達は一斉に振り返り走った。

 

頭は真っ白で、体が勝手に

最善の行動をとったような感じだった。

 

互いを見合わす余裕もなく、

それぞれが必死で柵へ向かった。

 

柵が見えると一気に飛び掛かり、

急いでよじ登る。

 

上まで来たらまた一気に飛び降り、

すぐに入り口へ戻ろうとした。

 

だが、混乱しているのか、

Aが上手く柵を登れず、

なかなかこっちに来ない。

 

オレ「A!早く!!」

 

B「おい!早くしろ!!」

 

Aを待ちながらオレとBは、

どうすりゃいいかわからなかった。

 

オレ「何だよあれ!?何なんだよ!?」

 

B「知らねえよ、黙れ!!」

 

完全にパニック状態だった。 

その時、

 

チリリン!!チリンチリン!!

 

凄まじい大音量で鈴の音が鳴り響き、

柵が揺れだした。

 

何だ・・・!?どこからだ・・・!?

 

オレとBはパニック状態になりながらも、

周囲を確認した。

 

入り口とは逆、山へ向かう方角から鳴り響き、

近づいているのか、音と柵の揺れが、

どんどん激しくなってくる。 

 

オレ「やばいやばい!」

 

B「まだかよ!早くしろ!!」

 

オレ達の言葉が、余計にAを

混乱させていたのはわかってたが、

急かさないわけにはいかなかった。

 

Aは無我夢中に必死で、

柵をよじ登った。

 

Aがようやく登りきろうかというその時、

オレとBの視線は、そこになかった。

 

ガタガタと震え、体中から汗が噴き出し、

声を出せなくなった。

 

それに気付いたAも、柵の上から、

オレ達が見ている方向を見た。

 

(続く)姦姦唾螺 4/7へ

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