自殺した美術の先生が描いたらしい絵
これは、ある絵にまつわる奇妙な体験話。
俺の通っていた高校には、職員玄関に一枚の絵が飾ってあった。
そしてその絵は、自殺した美術の先生が描いた作品らしい。
草原が描いてあって隅に洞窟がある、という構図だった。
その絵の前で、よく立っている友達がいた。
その友達の名前を仮に『岩田』とする。
岩田はその絵を見ると、決まって「赤い服を着た人が見てる」と言っていた。
俺は岩田ととても仲が良く、一緒によく遊んでいた。
外でサッカーをしていた時、岩田は突然「ベランダに赤い服を着た人がいる」と言ってベランダに向かっていった。
その日の放課後、岩田は階段から落ちて死んでしまった。
俺はその日から怖くなり、その絵に近づかなくなった。
しばらくしたある日のこと、俺は生徒会に入っていた為に夜遅くの帰りになった。
夜は昇降口が閉まっていたので、職員玄関から出なければいけなかった。
廊下を歩いていると、その絵の下に体操座りをした”赤い服の女”がいた。
俺はビクッとして、全力で逃げ帰った。
その日の夜に夢を見た。
それは、死んだ岩田が「あの絵を供養しろ」と言っている夢だった。
次の日、その夢のことを生徒会の人たちに話すと、“みんな同じ夢を見ていた”と言っていた。
事情を先生に話し、その絵を供養することになった。
それ以来、赤い服の女は見ていない。
(終)