深夜3時の来客

昔、俺がバイトしてた頃の話。

 

カウンターとボックスが一つだけの、

小さな箱のパブだった。

 

毎晩じゃないけど

カラ~ンと、

 

入り口のドアのところで

音がするんだ。

 

大体、深夜の3時頃かな・・・。

 

その頃は客なんて

一人もいない。

 

店長と俺だけ。

 

『カラ~ン』

 

「いらっしゃいませ!・・・?」

 

誰もいない?

 

そうすると、ワンショット必ず、

店長がカウンターに置くんだ。

 

何も言わず。

 

俺、いつか

店長に聞いたさ。

 

「誰か常連さんで

亡くなった人でもいるんすか?」

 

「う~ん?いないよ、そんな人?」

 

「だって、何気に

あの音がするとカウンターに・・・」

 

「ああ、あれね!

 

あの人が来た次の日って、

なぜか大入りじゃない」

 

「俺も店出してから

3年くらいだけど、

 

多分、ここの店の前の

常連かなんかじゃないのかな?

 

今では、うちの守り神

みたいなもんだよ。

 

あっちの人でも

嬉しいじゃないか。

 

今でも通ってくれるなんて」

 

「・・・」

 

こういう店長(マスター)

人柄のおかげか、

 

未だにこの不景気に潰れずに、

10年以上もその店は営業しています。

 

(終)

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