病院で遭遇したもう一つの世界

救急室

 

今週の火曜日のことです。

 

小4の息子が骨折しました。

 

そこで、近所の病院に連れて行くことに。

 

その病院は、以前私が盲腸の手術をした時に、麻酔が効きすぎて2日間意識が戻らず、「もうダメかもしれない…」と医師に言われたことがある病院でした。

 

家族は「医療ミスだ!訴えてやる!」とカンカンに怒りましたが、私も無事に生還したし、いざ訴えるとなると色々面倒になり、結局そのまま。

 

話を息子のことに戻します。

 

息子は車椅子に乗せられ、診察室へ。

 

そして、ギプスをするために診察室の隣にある『救急処置室』に入りました。

 

息子の車椅子を押して処置室に入ると、部屋の中央にある緑色の診察台に、中年の男性が、なんと真っ裸で横たわっていたんです。

 

私はギョッとして、「なんで男の人が寝かされてるの!?…ってか、なんで他人の処置中に私たち親子を部屋に入れるんだろう?」と、少々腹を立てながらも、その男性をつい、じっくり見てしまいました。

 

頭頂部がやや薄く、体にはあちこちアザだらけ。

 

お腹はパンパンに膨れ上がり、足は尋常な色ではありません。

 

太ももから下が土気色で、ひざは大きく裂けていて骨が…。

 

「えっ、重症じゃないの!?」

 

異様な光景に驚きつつ、状況を説明してもらおうと看護師さんを見ました。

 

すると、看護師さんの背後の壁に、青灰色のつなぎ服を着た若い男性が立っていたんです。

 

「顔面が完全に陥没していて、ぐちゃぐちゃに崩壊している…」

 

ただの、真っ赤な肉塊でした。

 

それを見た瞬間、「まさか!」と思い、再び診察台の中年男性を見ると、どう見ても生きている感じではありません。

 

薄目を開け、口は半開き。

 

微動だにせず、肌色もひどく悪い。

 

再び壁の方に目をやると、顔面崩壊の男性は、さっきと立ち位置が変わっていました。

 

看護師さんが歩くのを追うように、ゆっくりと向きを変えていたんです。

 

スーッと、まるで流れるように。

 

「どうかされましたか?今からギプスを巻きますから、待合室でお待ちください」

 

看護師さんにそう言われて、一瞬、息子をここに残していくのを躊躇(ためら)いましたが、私以外は誰も気にしていない様子。

 

「これは幻覚だ。幻覚に違いない…」

 

そう自分に言い聞かせてドアに向かって一歩踏み出すと、ドアのある壁にもう一人、白いシャツに黒いズボンを履いた小柄な男性が立っていました。

 

目が合うのが怖くて、すぐに下を向いてギュッと目を瞑ったので顔は見ていませんが、シャツから出た両手の色は紫色でした。

 

私は待合室で、ひたすら「なんみょぉほうれんげきょ~」とか、「なむあみだぶつ」とか、思いつく限りのお経らしきものを唱えたり、胸で十字を切ったりしました。

 

やがて、息子がギプスを巻かれて出てきました。

 

開口一番、「ぷっはぁ~!今の部屋、便所みたいな腐ったような臭いで、めっちゃ臭かった~!はあ~、やっと出られた~」と言ったんです。

 

また明日、レントゲンを撮りに病院へ行きます。

 

たぶん1〜2ヶ月は通うことになると思いますが、あの時に見た光景は一体何だったのか。

 

未だに、心の整理がついていません。

 

(終)

AIによる概要

この話が伝えたいことは、日常の中で突如として遭遇する説明のつかない不気味な出来事への恐怖と、その後に残る心の動揺です。

語り手は息子の骨折という現実的な問題で病院を訪れますが、そこで見たものはあまりにも異様で、現実とは思えない光景でした。裸の男性の遺体らしきもの、壁際に立つ顔面が崩壊した男、紫色の手を持つ小柄な男性の姿。誰も気づいていないかのように淡々と進む病院の空気の中で、語り手だけが異様な現象を目の当たりにし、恐怖と混乱に襲われます。

特に、息子が処置室の異臭に気づいたことで、単なる幻覚ではなく、何か現実とリンクする不可解な出来事であった可能性を示唆しています。誰にも話せず、説明もつかない体験を抱えながら、それでも明日以降も病院へ通わなければならないという避けられない現実が、さらに不安を募らせます。

この話は、理解できない現象に直面した時の人間の無力さや、目に見えない恐怖が日常のすぐ隣に潜んでいることへの警鐘を含んでいます。

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