絶対に入ってはいけない温泉 1/2

俺の地元は、

温泉で有名な所なんだが、

 

そこに1ヶ所だけ、

いわくつきというか・・・、

 

絶対に入ってはいけない

とされる温泉がある。

 

昔、そこでの掘削作業中に

事故があったとかで、

 

そこで起った話を。

 

当時、都会の大学に

通っていた俺は、

 

某県の田舎の実家に帰り、

 

集落に残って

農家を継いでいたA、

 

地元の大学に進み、

同じく帰省していたB、

 

と再会した。

 

小学校時代からの

幼馴染だった俺らは、

 

20歳を越えてから

初めて会うこともあって、

 

酒も入り、

夜中まで騒ぎまくった。

 

午前2時を回り、

さすがにトーンダウンし、

 

「そろそろ解散するか」

 

と言い始めた頃、突然、

 

俺の頭の中に、

例の温泉のことが思い浮かんだ。

 

何故だかは分からない。

 

小学生の頃にAの言い出しっぺで

一度だけ、

 

3人でその温泉の近くまでは

行ったことはあった。

 

入ろうとしたところを、

 

たまたま山道をトラックで降りてきた

おっさんに見つかって怒鳴られた。

 

その場でトラックに乗せられ、

 

「あそこは入っちゃいかんだろうと

親から教わらなかったか!」

 

と何度も怒鳴られた。

 

山を降りると電話で親を呼ばれ、

お袋が引き取りに来た。

 

もちろん家に帰った後も、

 

親父と一緒になって

散々叱られるのだが、

 

どうしても納得出来なかった俺は、

その晩、寝る時お袋に、

 

「大人になったら入ってもいいの?」

 

と聞いた。

 

お袋は、

 

「あんたが大学に行くくらい

大きくなったらね」

 

とだけ言った。

 

もちろん、

 

寝る前に発した冗談

だったのだろうが、

 

その一言を俺は何故か、

忘れることが出来なかった。

 

ふと、

あの温泉に行きたくなった。

 

あの時のお袋の一言を

信じるわけではないが、

 

また3人で昔みたいに

冒険したくなった。

 

帰り際、

2人にその話をぶっちゃけると、

 

意外にも承諾してくれた。

 

2人とも、昔みたいに

みんなで冒険したいのだと。

 

しかもAによれば、

 

今は昔ほどタブーな地では

なくなっているらしく、

 

周囲の山道が整備されたせいか、

 

1年に数回は勘違いした観光客が

温泉につかるまでにいかなくても、

 

足を踏み入れてしまうらしい。

 

もちろん彼らの身には、

特に何も起っていない。

 

地元の連合がしつこく

電話して確認している。

 

ただ、

 

今から行くのは流石に

気が引けるので、

 

3日後の昼間に行くことで、

2人とその晩は別れた。

 

出発当日、

 

俺たちはその温泉がある山に

足を踏み入れた。

 

山道をアスファルト道に

整備する過程で、

 

木をだいぶ伐採したのか、

 

小学生の頃よりは、

日光が入ってくるようになっていた。

 

暗さからくる怖さは、

ずいぶんと安らいでいる。

 

2kmほど歩くと、

例の温泉に入る山道が見えてきた。

 

山道の入り口の、

 

「この先、危険、入るな」

 

という木の立て看板を無視し、

 

ずんずんとその山道を歩く

俺たち3人。

 

○○温泉と消えかかった文字で

書かれた木の看板が見えると、

 

ようやく脱衣場になるよう造った

であろうスペースに到着した。

 

かなり昔のものだがら、

 

蜘蛛の巣が張ってるわ、

足場は悪いわで、

 

もう無茶苦茶だった。

 

だが、肝心の温泉は

ちゃんと湧いており、

 

ぎりぎり奥が見えるかどうかの

透明感がある。

 

ただ、

 

管理されていないだけあって、

温度は50℃から60℃だろうか。

 

相当熱かった。

 

流石に入浴するのは無理なので、

足湯だけで済ますことにした。

 

足湯でくつろいでいる途中、

 

一番、この温泉の歴史や

怪奇現象に詳しいAが、

 

色々と話してくれた。

 

その昔、

この町が温泉バブルに沸き、

 

いい湯が湧き出てると

されるこの地も、

 

整備しようという話に

なったようだ。

 

整備は順調だったが、

 

ある日、

 

掘削機器の不備による事故で、

かなりの死傷者が出たこと。

 

その後、作業を再開し、

なんとか完成にこぎつけたものの、

 

作業中は怪我人や

体調不良になる者、

 

怪しい人影などを見た者

が多発し散々だったこと。

 

完成し、営業を始めたは

いいものの、

 

怪奇現象が多発したこと。

 

入浴していると、

 

いきなり湯の中から

足を掴まれる。

 

いきなり作業着を着た

おっさんが入ってきて、

 

そのおっさんと目が合うと、

のぼせ気味になり失神する。

 

いきなりお湯の温度が上がり、

湯船から出ようとするも、

 

金縛りに遭ったように動けず、

大やけどを負う。

 

髪を洗っていると、

肩に誰かの手の感覚。

 

だが、

振り向くと誰もいない。

 

などなど・・・。

 

結局、重傷を負う人も

出てきたので、

 

町が強引に閉鎖させたらしい。

 

だが俺たちがいる間は、

そのような現象も起らず、

 

「もう事故から何十年も経っているから、

祟りも薄まってきてるんだろうなぁ」

 

ということで、

 

笑いながらその温泉を

後にした。

 

しかしその晩、

 

俺が家の風呂に入ってる時から、

事態はおかしくなっていく。

 

その晩、

 

いつも通りに風呂に入って

くつろいでいた俺。

 

髪を洗おうと、

 

シャンプーを頭の上に

泡立てていた時だった。

 

頭の上で増えていく泡に、

違和感を感じた。

 

明らかに手の平の上に取った

シャンプーの量に比べて、

 

泡立ちすぎなのだ。

 

「よく泡立つシャンプーにでも

変えたのかな」

 

と俺が思っているうちに、

泡は異常な速度で増えていく。

 

異常を認識し、

目を開けた瞬間、

 

風呂中に泡立った泡が、

俺の顔を覆い尽くしてしまった。

 

いざ泡に囲まれてみると分かるが、

 

圧迫感が凄く、

息が出来なくなってしまうのだ。

 

泡一面の中、

 

なんとかドアに手を

掛けようとするも、

 

目がやられてしまい、

なかなか手が届かない。

 

やっとのことで手が届いたものの、

今度はドアが動かない。

 

家の風呂のドアには、

鍵など付いてないというのに。

 

完全に手詰まりになり、

命の危険を感じ始めた俺は、

 

必死に親父やお袋のことを

叫び始めた。

 

そして足をバタつかせ、

 

なんとか自力でも

ドアを開けようと試みる。

 

その時、

誰かが俺の足を掴み、

 

ドアとは反対側の方向へ

引っ張り始めた。

 

「冷たい手だ」

 

「間違いなく風呂の中に、

誰か他にいる」

 

家の風呂は、

 

俺がギリギリ横になれるくらいの

広さしかないのだが、

 

その時は長い間、

 

足を掴まれ引きずられた

記憶がある。

 

その手の主は、

 

俺をどこに連れて行こうと

していたのか。

 

数秒後、

 

叫び声を聞いて駆けつけた

親父によって、

 

失神している俺が

救出された。

 

ただ、

 

現場を見たはずの

親父によれば、

 

大量の泡なんて

全くなかったし、

 

もちろん風呂の中には

誰もいなかった。

 

俺がそこに失神していただけ、

ということだった。

 

約1時間後、

意識を取り戻した俺は、

 

これは間違いなく、

あの温泉の祟りだと確信した。

 

(続く)絶対に入ってはいけない温泉 2/2へ

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