金曜日の部活帰りの夜道

女性の足元

 

俺はストーカーに悩まされている。

 

いつもは人の多い時に帰るんだけど、

 

毎週金曜日に部活で帰りが遅くなると、

学校を出てから誰かにつけられてるんだ。

 

ヒールみたいな音が聞こえるから、

たぶん女だと思う。

 

俺が歩いていると、

後ろからカツカツという音が聞こえてくる。

 

俺が止まると、音も止まる。

 

俺が走ると、音も早くなる。

 

そういうのって本当に怖い。

 

そして今日は金曜日。

 

護身用にカッターを忍ばせておこうと

思ってるんだ。

 

部活が終わった後、

静かな夜道を歩いていた時・・・

 

カツ・・カツ・・

 

やっぱり今日も来た。

 

俺はカッターを振り回して、

無我夢中で逃げた。

 

ストーカーを何とか振りきり、

無事に家へ着いた。

 

「ただいま~」

 

いつも母親が出迎えてくれるのに、

なぜか返事はなかった。

 

(終)

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解説

ストーカの正体は俺の母親。

 

俺の後をつけていたのは、

俺のことが心配だったため。

 

俺は学校に行くような年頃で

多感な時期にあり、

 

母親は毎日の送迎を息子に反発されいた。

 

そのため、

 

見つからないようにこっそりと

後をつけていた。

 

そして、

息子が家に着く前に先回りし、

 

何事もなかったかのように、

家に迎え入れていた。

 

しかも、

 

実は母親は毎日のように

息子の後をつけていた。

 

ただ金曜日だけ、

人がいない『静かな』状態だった。

 

俺はストーカーの性別を

ヒールの音だけで判断し、

 

姿は見ていない。

 

俺の得ている情報にも、

視覚的なものが一切ない。

 

つまり、

俺は盲人なのである。

 

だからこそ、

 

人が多い金曜日以外は

後をつけられているのには気付かず、

 

帰りが静かな金曜日の夜にだけ、

足音がはっきり分かったのだ。

 

そうとも知らず、

 

俺は無我夢中でカッターを振り回し、

誤って母親を殺してしまった。

 

だから家に帰っても、

母親が居なかったのである。

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