何処へ引越しても追いかけてくる女の霊 1/2

縁側

 

築30年以上の広島にある実家には、

 

ずっと昔から『変な女の人』が、

どこからともなく『出る』ことがある。

 

最初にその女を目撃したのは俺の兄で、

もう15年も前(当時5歳)になるのだが、

 

一階の縁側の隣にある小部屋で、

母と姉と兄と俺の4人で寝ていた。

 

午前3時か4時の太陽が昇りかけの頃、

兄が姉を突然起こして、

 

「なんか、音聞こえん?

縁側の外で歩いてる音がする」

 

と言ったらしい。

 

俺は話を聞いただけだから

詳しい事は知らないんだけど、

 

兄はその時、

ガラス戸を挟んだ縁側の外で、

 

なにやら後ろ向きで佇んでいる

変な女の人を見たそうな。

 

暗くてよく見えなかったらしいけど、

 

青いスカートを履いて、

首が不自然に傾いてたらしい。

 

姉はそんなもん見えなかったと言い張り、

 

母も早くから起こすなと

兄を叱ったんだけど、

 

5歳がつく嘘にしては、

あまりにもハッキリと説明するから、

 

母は不気味がったらしい。

 

不審者かも知れないから次の日に、

 

泊り込みの仕事から帰ってきた父と、

林業をしている祖父とで、

 

家に隣接している巨大な『納屋』を

捜索したらしい。

 

もちろん誰もいなかった。

 

それから1年ほどして、

父の仕事の都合で新潟に引越した。

 

引越ししてから半年経ったある日、

 

1階で俺は兄とスーファミで

遊んでいたんだけど、

 

ゲラゲラ笑いながらスーパーマリオを

やっていた兄が突然ダンマリし始めて、

 

俺は「どうしたの?」と兄の顔を覗いたら、

顔が真っ青で目が半開きになっている。

 

すると、急に咽(む)せ始めて、

 

畳の上にさっき飲んだ大量のサイダーを

吐き散らしたんだ。

 

いきなりの事だったので、

 

俺は黙って吐き続ける兄を

観察していたのだが、

 

ゲホゲホ咽る音に気づいた父が

慌てて駆けつけ、

 

兄の背中をさすってやったら

事なきを得た。

 

病院へ行ったとしても、

 

風邪をひいていたわけでもないし、

食あたりでもないし。

 

一体、ゲロを吐いた理由は

何だったんだろうと兄に訊いたら、

 

前に広島で見た『首が変な女の人』が、

窓の外に立っていたらしい。

 

俺はビビったのやら興奮したのやら

よく分からない気持ちで、

 

兄と一緒に父と母に女のことを言ったが、

 

なぜかメチャメチャ怒られて、

俺と兄にゲンコツまでくれた。

 

それから5ヶ月ほどした頃、

次は神奈川に引っ越した。

 

引越しした理由を聞いても、

 

父と母は答えてくれないし、

なぜか俺たちを怒る。

 

姉は訳が分からないから、

とりあえず泣いていた。

 

神奈川に住み始めて2年ほど経った。

 

兄は12歳、

俺は7歳になったある日のこと。

 

兄の友人3人が家に遊びに来ていて、

俺も加わって皆でスーファミをやっていた。

 

あまりに長々とハマっていたので、

外はあっという間に真っ暗な夜7時前。

 

母がPTAの友達と買い物から帰って来て、

 

すぐ兄の友達3人には

家へ帰るように叱ってから、

 

兄と俺で友達を玄関でサイナラを

しようとしたその時・・・

 

兄が突然、ズズッと後退りして、

玄関から飛びのいた。

 

こんな異常な行動を、

 

母と友達と俺はポカーンとして

兄を見ていたんだけど、

 

兄は表情が固まってしまって、

なにやら気分が悪そうだった。

 

5秒ほどその場で固まったと思ったら、

そのまま台所に走って行ってしまった。

 

母と俺と友達は空気が読めず、

 

トイレでも行ったのかな?

とか喋りながら、

 

3人の友達を送った。

 

母が「何があったの?」

と兄に聞いてみると、

 

玄関の右側の壁にある下駄箱の下の影から、

白い足が覗いていたらしい。

 

母は黙って兄の話を聞いていたが、

 

母も気分が悪そうに、

深刻な表情をしていた。

 

それから1年ほど経って、

 

実家の祖父が死んだのをきっかけに、

広島に引っ越すことを決めた。

 

祖父は地元でも親切で人望が厚かったので、

大勢の人が葬式に来てくれた上に、

 

お坊さんが3人も出動するという、

かなり豪華な葬式だった。

 

それから一週間経ったある日、

 

葬式の時に撮った写真が

現像されて送られてきた。

 

俺はアホだったので、

 

「さ~てと、

心霊写真でも探そうかなぁ」

 

と不謹慎なことを言いながら

写真を見ていたら、

 

母と父に物凄く怒られた。

 

後から改めて見てみると、

 

変なモノが映っている写真が

3枚ほどあった。

 

1枚目は、皆で集合して

縁側を後ろに撮った写真なのだが、

 

縁側のガラス戸に付いているカーテンに、

 

何か『黒い髪』のようなものが

絡み付いている写真だった。

 

2枚目は、俺がふざけて兄と

廊下を後ろに撮影したものだが、

 

廊下が不自然に暗く、

 

顔のようなものが半分だけ、

壁から覗いている。

 

心なしか、

白目を剥いているようにも見える。

 

3枚目はガラス戸を挟んで

外を撮影した写真なんだけど、

 

ガラス戸には『手の跡』が

ハッキリと映っている。

 

指紋などではなく、

透明な手がベッタリと張り付いてる。

 

当時俺は9歳になるかならないか

くらいのガキだったので、

 

写真の意味がよく分からなかった。

 

とりあえず親に教えてみたけれど、

 

気のせいとか言って、

写真を寺に持って行ってしまった。

 

(続く)何処へ引越しても追いかけてくる女の霊 2/2

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